三年生が引退した年。




哲は、初の練習試合で初のホームランを打った。
打つと、照れ隠しをするように、小さくガッツポーズをしていた。

周りの一年生はというと、大喜びであった。
勿論、私もである。



「あいつやりやがった!
 初スタメン、初打席、初ホームランだ!」
純は大喜びだった。
でも、その反面少し悔しそうだった。

そのホームランが、一年生たちの心に油を注いだ。


その日から、皆はもっと遅い時間まで練習を続けた。




*




「今日は凄かったね!
 やっぱりさ、練習は大事だよね……気づかせてくれてありがと」

「いや、別に俺は何もしてませんよ」
浮かれず、いつも通りの哲は言った。



哲は、いつもそうだ。
ホームランを打っても、ファインプレーをしても浮かれずに、
練習を怠らない。

その日もそうだった。



「フフ……哲也君は何を言っても動じないなぁ」

「?」

「あ、いや、こっちの話」
ド天然な哲に言った。



「あ、じゃあ私こっちだから。
 また明日ね」

「はい、さようなら」
哲はそういうと、スタスタと帰ってしまった。




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