会いたくない。
けれども、行かなければいけない。
大学の門の前で友達と別れる。
皆は買い物に行くようだ。

私は、片方の耳にイヤホンをつける。
好きだったルパンの歌の場所はすぐにスライドさせる。
今はちょっと聴きたくなかった。

今は、少しだけ哲の事を思い出したくなかった。



*



「あら、彩花ちゃん。
 来てくれたの? ちょっと手伝ってほしいの」
もう着いてしまった。
グラウンドではもう練習を始めている人が多々いる。


「はい」
私は礼ちゃんに気づかれないように言う。
まぁ、気づくも気づかないも哲と付き合ってるなんて極々数人しか知らないであろう。
いや、そうじゃなきゃ困る。


「さっき東君が来たのよ」

「ふーん、どうだった?」

「まぁ、いつも通りって感じよ」

「ふーん」

「興味無さそうに」

「興味あるよ?」
嘘、実はちょっと哲を探していました。
東君の話は聞いてましたしっかり。
けど、そこまで興味は無いんです。すみません、礼ちゃん。


「で、これが東君からの差し入れのドリンク」

「……そんなに収入があるんだ」

「そこ?」
礼ちゃんはいつものように優雅に笑っている。
こんなにメガネが似合う美人居ないと思う。
まぁ、メガネが似合う球児は居ますけど。


「あ、じゃあ運んでもらおうかしら。
 伊佐敷くん! 彩花ちゃん連れってくれるかしら?」

「え。あ、はい!!」
水分補給をしていた純が言った。
どうした、いつものスピッツはどうした。


「じゃあ、宜しくね」
礼ちゃん、前々から聴きたかったんだが
その胸はどうしたら手に入るんだい?


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