「名前。好き、大好き。」


「俺も大好き。」



そうやって優しく頭を撫でる彼。

愛をささやく、彼。


俺は何をしてるんだろう、こんなところで。


抱きよせる腕は何より優しそうで、瞳もこれはこれは本当に釘づけになるほど真っ直ぐで。

そんな彼を見てるのがすごくすごく苦しくて。



「今から何か食べに行く?」


「お好み焼き食べたい」


「それかよ」


彼が困った風に笑う。

ずるい、全部ずるい。とか、下唇を噛んでも所詮俺のせいなわけで。


馬鹿だよなぁ、あんたのことになると昔の癖が出てきて夢を見るんだ。

もしかして、って期待して、いつか俺を迎えに来る王子様だなんて妄想を膨らませた。


わざわざ白馬に乗ってくるかもしれない、とか。ふざけすぎて一人で笑ったこともあったっけ。



あんたに思いの丈の1割すら云えぬまま、時間なんて過ぎたんだけどな。



ちゅ、と可愛らしいリップの音が俺の頭に響く。



嗚呼、もう、あんたは……


ぐちゃぐちゃになった情けない顔で、気づかれないように振り向く。

後ろ首を引っ掻かれるような痛みに耐えながらもその場から逃げだす。






相手が、俺だったらよかったのに、なんてまた馬鹿げたことつぶやきながら。


俺じゃない

(プラスチックの靴を履いて勘違いしてただけ)

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やっぱりちかちゃんは乙女。

20110830


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