廊下は涼しく、まだ少し早いのか生徒も少ない。

毎日が暑くても、朝はちゃんとスカッとした風が吹くから申し分ないのだ。



…………まぁ、最近はその風あっても暑くなる理由がひとつあるのだが…



―ダダダダッ



「おっ、おおおお、おはよう名前!!!」



「…はよ…。元親。」



わざわざ席から立ち上がり、俺の目の前まで猛ダッシュする。

走る距離でもないのに。席から離れる必要もないのに。

…とか、最初は思ってたんだけど、日課になって慣れた。クラスメイトも慣れた。

慣れたのに…動作を繰り返す本人だけは慣れないようだ。



「…とりあえず…その…座ろう。うん。席に。」



俺が入れない、と言うと「お、おうっ!」とか少々上ずった声で返事してどきながらも、自分の席に着こうとする俺についてくる。元親の席は俺の後ろ。


俺が席に着き、鞄をおろして座る。元親も座る。



「………」


「………(じーっ)」



俺の後ろでもじもじしやがる。

俺が後ろを向いてどうかした?と聞けば耳まで真っ赤にしてなんでもねぇと叫ぶ。

そう、と本を出して読み始めると小さな溜息が聞こえる。



「名前ちゃんおはよー」


「ん。はよ。」


3年なのにわざわざ2年の教室までくる猿飛先輩。まぁ真田の様子を見に来るっていうのもあるけど(あいつ朝からうるさいし)。そしていっつも俺のとこに来る(真田の面倒見なくていいのか?)。



「そうそう、この前借りた漫画返すねー」


「あー、そういや貸してたっけ」



貸してたねーとか他愛のない話をしてると後ろからなんというか…オーラが…

いやまぁこれも日課なんですけども…怖い


「あー…鬼の旦那、まだやってるの?」


「それ聞くの何回目?」


「忘れた」


とりあえず元親が大変なことになる前に出て行ってくれませんかね、と振り向きはしないものの視線だけで後ろを指すと「はいはい、邪魔者は消えますよー」と漫画を俺の机に置いて教室を出る。

そして後ろのどす黒いオーラも消える。しかもいつもより華やかに。(元親が〜だから帰ってー、と言うと嬉しいみたい)



***



授業中。


後ろから二つのガスバーナーに当てられたような視線のせいで集中できませんでした。



***


体育。


バスケをした。

元親がチームに入れてくれと言わんばかりに目を輝かせて俺を見る。

この前しなかった時はすごく落ち込んで試合が終わると体育館の端っこにうずくまった。

そんな気まずい空気は御免なのでチームにした。

すごく頑張ってた。


***


授業中。(2回目)



「あれ?確かに教科書持ってきたはずなのに…」


教科書がない。

忘れ物はあんまりしないのだが…どこいったんだろう。



「名前!俺の、か、貸す、から!」



しどろもどろに言いながらも女の子みたいに可愛らしい字で書かれた「長噌我部 元親」と書かれた教科書を渡してくる。手も若干震えてる。

ほんと、これがあのむさい不良?やんきー?の番長だなんて冗談も程があると言いたい(実際本場になるとすごく男らしいのに)。


「お前はいいのか?俺が悪いんだし…」


「!!いっ、いやっ、俺は、そのっ…ちゃ、ちゃんと!聞いてっから、よ!」


おい、顔から湯気たってるぞ。


「…ほんと優しいよなお前。ありがとう」


「きっ、きにするここここたぁ、ねっ、ねぇってもんよ!!」


俺よくやった!っていう顔。ほめるとすぐこれ。可愛いと思うのは慣れのせいだろうか。


うん、と前に向き直ろうとした時に調度元親の鞄が目に入った。


「………」


「ど、どう、した?」


「えっと…元親…それは、もしかして俺の、じゃないでしょうか」


ちらっ、と同じ教科書が鞄の中から見え、確かに俺の名前が書いてある。



「………」


「………」


「……(ぶわっ)」


「!?!えっ?あ、ああ!違うね!それ数学の教科書じゃねぇか!!ははは!!表紙似てるよなぁ!!まったく!!」



あと少しでおお泣きされるところだったので精一杯ごまかしました。


***


昼休み。


元親がトイレに言ってる間に暇で、本当に、本っっっ当に!理由もなく!!理由もなくだからね!!元親の机を!!見ました!!



(相合傘…だと…)


ほんとうに乙女ったらありゃしないよこいつ。

誰誰…と予想はついてるものの、覗いた。


『名前』『元親』


「………」


見なかったことにしました。


***


放課後。



「じゃあなー元親ー」


「おっ、おう!ま、また明日!!」



まだノートをうつしてる元親に向って一声かける。こうすると嬉しいようだ。

だけど、彼があまりにもあわてるから机から消しゴムが落ちる。



「あ」


俺が消しゴムを拾うと、一瞬にして死人のように真っ白な顔をする。

ど、どうした…



「ばっ、そ、それ返せ!!!!」


「え?」


「い、いいから!!返せ馬鹿!!」


「え!?」


は、初めて元親に馬鹿って言われた!!

でもなぁ…それほど焦ってるのって見てるとなぁ…気になるんだよなぁ…


「ニィ…」


「!!!!!」


えー、何々ー、と後ろに振り向いて消しゴムをみる。

あれ?これ…


カバーから少しだけ見える黒。インクの色だ。

ちょっと待って、まじかよ。


「あああああ!!ほんと!!!勘弁!!!」


「どうせ見当はついてるけど」


「へ!?」


カバーをぽい、と捨てれば人生で何回も見た『名前』の文字が彼独特の可愛らしい字で書いてあった。



鈍感乙女ちっく`

(気持ち……悪くねぇの、かよ…)

(いや、気持ち悪かったら結構前から言ってるよ)

(じゃあ…!)

(ずっと前から知ってたからね)

(へ!?!)




―――――――――

初めてのbsr夢^o^

おとめてぃっくな元親が好きです。兄貴っぽいとこも好きですけどね!

鈍感というか、隙ありすぎというか

20110827


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