彼の持ち場が俺のと隣り合わせになり始め、周りの環境がほんの少しだが変わったような気がする

館長曰く、「ショーのついでに触れ合い場に寄りたいという奴が多かったりするから、なるべくスタジアムの近くに置く」という訳であるが、確かに俺のショーが終われば同じ客が隣の彼の場へと足を運んで行く

彼はと言えば、数ヶ月前に館長が拾ってきたウミガメのこと。

別にウミガメは彼だけではないから、こっちでは名前と呼ばせてもらってる

彼も別に気にしないようではあるからいいのだろう



「お疲れ様ですサカマタ様」


最後のショーが終わり、自分も水槽の中から上がり、部下にも明日へ備えるよう言葉を投げる


間接を鳴らし、廊下を通れば案の定隅っこで丸くなってる名前がいる



「名前。」



名を呼んでも返事はせず、人気のないこの廊下で聞こえるのは自分の呼吸と彼の寝息

こんなところで寝ていては駄目だと叱るべきなのだろうけども、不思議とその気にはならずしゃがんで彼の肩を揺らす



「はぁ…こんな所で寝てると他の奴らにチクられるぞ」



それでも反応しない彼に対し、もうここに放っておこうかと一瞬思って立ち上がる

だが、立ち上がったものの床に接着剤が塗ったくられたかのように足が動かない



「でらめんどくせぇ奴だな…」


なんていうが、どこかで彼に同情している。俺はショーだけであり、あの大勢の客と接触はしないがこいつは一日中慣れない人間に囲まれ、彼らの世話を一人で任されているわけであって


幹部の2番なだけあって、館内の展示物の場所は記憶している


溜め息を吐きつつ彼を脇に抱えてみるが、寝てるからなのか死体のように見えてなぜかそれが好ましくない

だんだん苛立ってきて、無意識にも彼を乱暴に背中へ回した

その衝撃が少し大きかったのか背中の彼が驚いたような声を上げる


『サ…カマタ…?』



「あんなとこで寝てると掃除の邪魔になるだろ。」



『あ、悪ぃ…後片付けもすんの忘れてた』



「もういい。仕事中に寝るくらいだ。片付けてる途中にも寝てしまうだろ。それこそ迷惑だ」



『わざわざ負ぶらなくてm「あー、黙れ。でらうるせぇ。亀の歩くペースと合わせるほど暇じゃあない。』



彼の言葉を遮れば後ろが静かになり、素直におぶられ首に腕を回される

触られたところがむず痒いのを無視して歩き出す





彼の水槽まであと半分となったところで、急に鼻を触られる

触られるというか、撫でられているのか



「……なんだ」


『んー…別に。』



気難しく感じ、歩くペースが早くなる






『お疲れさん』







そういってゆっくりと再び俺の首に腕を回す

体のあちこちがぎこちなく感じる



けど、悪い気はせず、不意に返事をしてしまう









「ああ。お疲れ」








(サカマタ最近よく会議に遅れてんじゃん!?何してんのよーアタシトロい奴嫌いよ!)
(でら世話が焼ける奴がいてな)






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初の鯱夢でなんというかのんびりした感じにしたかったんです。

サカマタさんは常に鈍感でいればいいと思います

20110508


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