§False☆Magica
2013/04/06 07:37
◎ポタ×まどか in A false Life-Game的な設定・ストーリー妄想。
要はfalse主が魔法少女になったら。
時間軸秘宝後。割と適当。
追記以降に設定らしきもの。イラスト(笑)も載せちゃったので注意。
↓
――第二次暗黒時代は、二年弱で終焉を迎えた。
その最中はイギリス中を闊歩して暗雲を撒き散らし続けていたディメンターももう辺りにはなく、明るい初夏を告げる陽光を遮るものはない。
そんな陽光を浴びまいとする、童話の吸血鬼の如く、シルメリアはカーテンを閉めきって硬い床に座り込んだままでいた。
水も食物も摂らず、まだ死喰い人の本拠地である屋敷のシルメリア自身の自室、その片隅で屍のように。
ホグワーツの戦いには全戦力を投入したゆえに、昨夜の時点でこの屋敷には誰も残っていなかった。
そして、戻ってきたのはシルメリアただ一人だった。
ヴォルデモート卿が、今度こそ完膚なきまでに殺されたからだ。
かつてシルメリアが見逃した死喰い人の二人――レギュラス・ブラックとセブルス・スネイプ、そのどちらかでも先に殺していれば、もしかするとこの現実は変わっていたのではないだろうか。
或いは、ヴォルデモート卿が消えた十年強のうちに、シルメリアがハリー・ポッターを殺していれば。
ヴォルデモート卿が、再起不可能な段階まで分霊箱を破壊されて、死亡することはなかったのではないか。
そう考えると、自分に磔の呪文を何度向けても足りない。
ヴォルデモートではなく、シルメリアが死ねばよかったのだ。
ふと、カーテンと硝子窓の更に外側に、
茫、
と気配が立った。
屋敷に掛けた保護魔法は、ヴォルデモートこそ死んだとはいえシルメリアが掛けた分の術は生きている。
杖を向け、気配に向かって爆破呪文を振るった。
耳を劈く轟音。脆い音を立てて硝子片が飛び散る。
間違いなく死んだ、と膝を抱え直したその時、
ちゃっ、
と、猫の爪が石畳を掻くに似た軽い音をシルメリアの聴覚が捉えた。
哺乳類系のアニメーガス姿で跳躍してきた、闇祓いだろうか。
殺さなくては、と割れた硝子を潜ってシルメリアの部屋に入ってきた気配に杖と視線を向ける。
狐とも猫ともつかぬ、白くのっぺりした生命体らしきもの。
愛嬌があるとも、不気味であるとも形容出来るその外見。
未知の物に対する警戒感が一筋、ヴォルデモート卿の死で真っ黒に塗り潰されていた心に差し込んだ。
「――――」
「―――――――」
しかし、それが言っていることは不思議とシルメリアの耳に残らない。
こんな時なのに、何故この物体は楽しげにぺらぺらと喋っているのか。
ゆぅらりと黒い霧が形を作り、目の前の存在への悪意と成っていく。
「だから――僕と契約して、魔法少女になってほしいんだ」
「誰と契約しなくても、私は最初から魔女よ。馬鹿馬鹿しい――アバダケダブラ」
あのいまいましい少年の瞳と同じ色をした緑の光線が、白い生命体に真っ直ぐ突き刺さった。
抵抗なくそれが斃れた、
瞬間、
全く同じ姿かたちをした"それ"が現れる。
そしてそれは、一片の躊躇もせずに斃れて動かないそれを喰らった。
無関心にシルメリアが視線を向ける中、かつての自分を完食するなり、
「シルメリア。話も聞かずにあんまりじゃないか」
と。その生命体は、そう、口を開いた。
*
どうせシルメリアには時間があるのだ。
その存在を探査しても、目の前の生命体はアニメ―ガスでもないらしい――つまり、シルメリアを殺しに来た訳でもない。
面倒なことになるのだったら、殺しても無駄のようだし強制的に転移させてしまえばいいだろう。
キュゥべえ、と名乗った生命体の話した魔法少女。
絶望による倦怠感で相槌も打たなかったが、シルメリアは確かに聞いていた。
「あぁ、願いと引き換えに魂を差し出す――…聞いたことがあるわ。私たちと違って魔法を使えないマグルですら、その生涯において一度だけ、途方もない奇跡を行使出来る…"魔法"があると」
「まぁ、資格のない人間も多いけどね。…でも資格さえ満たしていれば、君たち魔法使いが叶えられない願いすら、この僕が叶えてあげられる」
「…………」
「実のところ、僕は君に前から目をつけていた。イギリス魔法界における大量殺人鬼――そして千年前の因果すら引きずっている。…シルメリア、そんな君なら、どんな途方もない願いも叶えられるんだ。君が魔法少女になれば」
「………っ…」
「君の全てを差し出して尚、叶えたい願いがあるんじゃないのかい?」
「…………私は――」
上手く言語化出来ない。
この結末を回避して、今もヴォルデモート卿が存在出来るように――不都合な存在を排除出来る段階まで、戻って。
歓喜と悲哀と狂気、その他諸々がないまぜになって、喉の奥を突き上げる。
らしくもなく、叩き付けるが如く吐き出す。
裂帛の叫びの形をした、祈りの全てを。
「――――――っ!」
黒い光がスパークした。
追記
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