リクエスト文(今度こそ次で最後)
2013/04/13 20:57

すごい気持ちいい。
なんだろう。なんか気持ちいいは気持ちいいで同じなんだけど、いつもよりも気持ちいい。15倍くらい気持ちいい。
いつもみたいな、焼肉食べ放題にがっつくような、ちょっと乱暴な征服欲が満たされるみたいな、『来た、見た、勝った』的な気持ちよさとは違う。
なんだろう。なんか、幸せ。なんか平和。

例えば、なんか知らないけど銀さんが『きーてくれ。今日、俺、人を殺しちまったんだ』って言ったら、『そうですか、わかりました。でも安心して下さい。たとえ世界中があんたを糾弾したとしても、僕はあんたの味方です。えいえんに』とか言ってしまえそうな、そういう心情だった。

これは何か。突っ込まれるとこんな心情になんのか。
僕は僕の上で強く目を瞑って律動している銀さんを見ながらそう思った。

「ぎ…銀さ……」

ん?銀さん?…いや、銀さんなんだけど。
見た目は新八だ。抗いがたく新八だ。
見てるだけなら新八だ。新八。
そして、僕は今、銀さん。

…じゃあ、あれか。
銀さんもいつもこんな感じなんか。
僕が、何か知らん血塗れの真剣をぶら下げて『きーてください。今日、僕、人を殺してしまったんです』と言ったら、銀さんは言うのだろうか。
『そうかわかった。だが安心しろ。たとえ世界中がお前を糾弾したとしても、俺はお前の味方だ。えいえんにな』って言うのだろうか。
いつもそんな感じになってるのだろうか、銀さんは。

えっ、そんな感じなの?
たとえ世界中が僕を糾弾しても、銀さんは僕の味方をしてくれんの?
えいえんに?
そ…そうなのか?
ぎ、銀さん。そうなの?

「ア、」

ダメだ、気持ちいい。ちんこ触られてないのにイきそう。当たり前だけどそんなん初めて。すごいや、なんてミラクルなんだ銀さんボディ。
このままもう少し突かれたら、なんか多分、イくっていうか、わからんけど、…フワッてなる。
フワッてなりたい、と思いながら僕が銀さんを見上げると、銀さんも僕を見下ろしていた。額に汗がいくつかの粒になっていて、眼鏡が若干曇っていた。
僕は『たとえ世界中があんたを糾弾しても』と思いながら、指先でレンズを拭いてやった。僕が、銀さんにこうされると嬉しいからだ。
曇りを拭いたレンズの向こうでは、銀さんのでかい目が意外に弱々しい様子で潤んでいた。
僕は、『大丈夫だそんな目をするな僕はお前の味方だ、えいえんに』と思って、弱々しい銀さんの頬っぺたを優しく撫でてやった。

銀さんは、

「イきてえ」

と細く呟き、更に、

「いいか…?」

と、訊いてきた。

は?なにがだ。
イけばいいだろ、気持ちよく。いいに決まってるじゃないすか。何すか、今さら遠慮なんて気持ち悪い。
と、答えようとした僕に、銀さんは言った。

「このまま」

と。

えっ?
このまま?
何がこのまま?

理解出来ない僕に、銀さんは、弱々しい顔のままで言った。

「中で、出していいか…?」




僕は、血塗れの真剣をぶら下げて『きーてくれ』と言う銀さんをぶん殴った。
そして『自首しろ!!!』と怒鳴り付けた。

「や!中はやだ、ゃ…」

中身の新八はアホをぶん殴って怒鳴り付けた。しかし外身の銀時はアホのちんこに骨抜きになっている。舌もろくに回らない。
なんてこった、しっかりしろ、しっかりしてくれよ坂田銀時ボディ。

「ア…ぁア、気持ちい、ゃ、めて…」

「んだよ…、どっちなんだよ。ッア。ふ、ダメ…だ。も、出る」

「だ!出さないでよ、ア、ァ」

「いーだろ、別に。水くさい。…つうか、おま、お前、…んっ、ぜんっぜん我慢がきかねんだけど。どうなってんの」

「し、ししし知らな…、ヒ、とにかく、な、なな中はヤアァ」

…全然物の役に立たん坂田銀時ボディーに、僕は絶望した。

そんなにか。そんなにお前はちんこが好きか。口がきけんようになる程好きか。
それにしては僕が突っ込んでる時にそんなんなったの見たことないが、それはあれだ、僕がこうした快感に慣れていないからであって、つまり精神的な問題であり、僕の突っ込み方がへたくそだからなわけでは決してないんだよな。
…え?そうなんだよな?僕がへたくそなわけではないんだよな?

「…ヤダ…うっ、ぁ…ヤダよう」

「なんだよ、…なんでヤなの?」

やだやだ言う僕を、銀さんが少し悲しそうに見た。

「ちゃんと…片付けもしてやるから」

「ち…」

違えんだよ!そういう事じゃねんだよ!

「やっぱ、出されるの気持ち悪いか…?」

違えんだよ!ますます遠ざかったよ!

「ねえ…なんで?なんで?」

銀さんは、もうダメそうな感じを必死で堪えるような辛い表情で僕を覗き込むと、

「なんで…」

とひたすら苦し気に囁いた。
そして、

「新八」

と、この期に及んで名前なんか呼びやがったのだった。

「ン!」

「ゥ、あ…だから締めんなっ…て…」

そんな声で名前なんか呼ばれて感じてしまった僕は思わず銀さんをきつく締め、銀さんは動きを止めていた腰を震わせた。そして、

「つ…つうか、も、ダメだ。マジで…」

素の声で呻いた。

「だ、…ヒぁ、だから、ダメ、ヤダ…ってぇ」

僕は色々とグズグズになりながら、それでも拒む。

「…んでだよ!なにがヤなんだよ!銀さんの事が好きなんだろうが!だったらいいだろ!あーもーダメだ。もー出すかんな!」

遂にクソ野郎剥き出しになった銀さんが喚いた。

「ヤ…」

…ダッて言ってんだろうが!このクソ野郎があああ!

だって、だって!

「…僕もまだ中で出さして貰った事ないのにいいいいい!!!!!!」

突っ込まれたまま、僕は絶叫した。

いつか、そのうち、きっと許してもらおうと思ってたのに。
なんかわかんないけど、すごくいい雰囲気になって、僕が銀さんに『銀さん…中で出しても、いい?』ってちょっと恥ずかしそうに訊いて、そしたら銀さんが『ああ。いいぜ、出せよ…』って優しく僕を抱き締めながら囁く、みたいな、『…銀さん、好きです』とか言って『ふっ…お前の熱ィよ』とか微笑む
…みたいな、そんな夢を見ていたのにいいい!

もー出すかんな、とか言うクソ野郎に、僕の大切な初めてと銀さんの純潔を同時に奪われるのかよおおお!

「そ、そんなの…、い…イヤだあああ!!!」

「………」

慟哭する僕を、銀さんはじいっと眺めていた。レンズが反射して、どんな表情だかわからない。
僕は、表情のわからない銀さんの視線に晒されながら、銀さんが銀さんが僕が僕が、とか自分でもわけのわからないことを言いながらみっともなくしゃくりあげた。

「そういう事かよ…」

しゃくりあげる僕を見下ろしている銀さんが言った。

「銀さん」

「お前…そんな風に俺を、俺の事を」

銀さんは、ふっ、と笑い、眼鏡の眉間を中指で押し上げ、押し上げたまま顔を手で隠すようにちょっと向こうを向いた。

「ぎ…銀さん」

僕は洟をすすり上げて、向こうを向いた銀さんの斜め下からの頬の形を見た。
感動してるのか。
僕の愛に感動してるのか、坂田銀時。

「お前の気持ちはわかった」

「銀さん…!」

「気持ちはわかった」

「銀さん…」

「気持ちは」

…『気持ちは』?

「銀さ」

「わかったわかった」

わかった、と言いながら銀さんは、突っ込んだまま少しだけ小さくなったちんこをまた出し入れし始めた。
なんか、淡々と。

「えっ、ほんとに?ほんとにわかった?」

「あー、わかったわかった。お前の気持ちはわかったってんだよ」

なんだ。『ってんだよ』ってなんだ。

「う…っ、あ、ダメだ。お前、ほんとダメだわコレ。早い。お前早いわ。早すぎ」

「し。失礼じゃないですか!いくらなんでも失礼じゃないですか!」

「うっさいな。わかったっつってんだろ!ほっんとしつこい!しつこい子だなお前は!…ア!ァん、出る」

「わわわ、わかってねーだろ!テメー、ぜんっぜんわかってねーだろ!やめっ、やめやめ止めろぉぉ!」

「やめねーし。ハッ!…はは、ヒヒ」

「止めろぉぉ!このゴミクズがあぁぁ!」

「銀さん。好きです。世界一好きです。中で出させて」

「やかましいわ!銀さんじゃねえ!ふ、アッ、あん!」

「新八。好きだ。世界一好きだ。だから…中で出させろ」

「…………」

…や、やかましいわぁぁぁぁぁあ!!!



やかましいわ!と叫びながら僕はフワッとなった。
そして、やかましいわ!と叫ばれながら銀さんはイッた。
僕の中で。

「………」

僕はまた、消えているテレビの画面を見た。
テレビの中では、仰向けに脱力した銀さんがテレビの向こうの僕を見詰めていた。

『しんぱち…。俺、汚されちまった…』

銀さんは呆然と呟いて、両手で顔を覆った。剥き出した肩がふるふると震えていた。僕はその弱々しい厚い肩を抱き締めようと手を伸ばす。

『銀さん…』

銀さんは身を捩って僕の手を避けた。

『触るな…!お前の手が、汚れる…』

『そんな事ないです!銀さん、銀さんはキレイです…!』

『しんぱ…』

『守れなくて、ごめんなさい…』

僕は、僕を避けようと身を捩る銀さんに構わず手を伸ばし、肩を抱き締めた。…



「いやあ〜。すげえな俺!こんなすげえとは思わなかった!常々、なんつうか俺がもう一人いたら突っ込んでみてえなって思ってたんだけど、こんな形で夢が叶うとはな!」

妄想に逃げる僕の前で、袴の帯を縦結びに締め直したゴミクズが、実にスッキリした声でゴミクズな事を言った。
最低だ。なんという最低な野郎だ。
こんな最低な野郎に、僕の初めてが、銀さんの純潔が。

「難を言えばアレだな、童貞のちんこのせいですんげー早く終わっちまったっつうのが惜しかったなー。なんかもっと、絶倫みてぇな奴の体に入れればよかったのによ」

…神よ。こいつに天罰的な何かをお与え下さい。

僕は汚されてしまった銀さんの体にゆっくりと力を入れて起き上がろうとした。
しかし、思うようにならない。
あのフワッとした感じはフワッとしてるくせに意外と長続きしていて、僕は終わった後の銀さんがいつにも増してだるそうにしている理由がわかったように思った。
ああ、こんな感じなのね。

「あ〜、腹減った。おい銀さん、いつまで寝てんだ。さっさと起きて飯作れ」

なんでだ。
昨日は僕が昼ごはん当番だったんだから、今日は銀さんの番だろうが。
僕がそう言うと、

「そうですよ。今日は銀さんの番だから、銀さんが作って下さいよ。銀さん」

銀さんは物凄い憎たらしい口調で言い返した。物凄い憎たらしいが、それはまさに僕の口調だった。
張り倒してやりたかったが、先日、銀さんとやった時に、ぐったりした銀さんの尻を蹴飛ばして

『何甘えた事言ってんすか。セックスくらいなんだ。いいから飯を炊け。お前に出来ることなんか、そんくらいしかねぇでしょうが』

とか言って飯を炊かせた事を思い出し、言い返せなくなった。

人に酷い事をするとなぁ、新八。その報いが巡りめぐって我が身に返るもんなんだよ。だから人には優しくしないとダメだぞ。
うん、わかったよ父上。

巡りめぐった報いは、我が身に返る時には15倍くらいになるのだな、と僕は思った。
そして、15倍で返ってきてももういいわ、と思いながら、中にゴミクズを収納している眼鏡の背中に思いきし蹴りを入れた。



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