【寒天問屋】


天満エンディング



「わてはな、善次郎」

 和助は何年も前に焼け落ちた鎮守の森を見つめ、植え替えた木陰に入って、まだ若い御神木に寄り添うようにして杖を立てた。「――いつも思っとったんや」

「旦さん、あきまへん。膝が悪うなってからは、一人で立つのもやっとでっしゃろ」

 和助は善次郎の叱責を聞き流した。

「わてには店があった。わての人生には、いつも寒天があった」
「わてもだす。ここまで一緒にやってきて、後悔したことあらへん」

 遠くでは花嫁である真帆が松吉の腕をしっかり握っているのが見えて、善次郎は同じようにした。
 





data main top
×