【寒天問屋】


天満エンディング



「お前はんに、なんも遺してやられへんのかって」

 善次郎は言葉に詰まった。云たいことはあるのだが、喉がつっかえそれ以上が出ない。

「嫁も。子供も」
「やめてぇや。旦さん、もう」

 繋いだ黒い袖の手首が折れそうで、互いに目やり場に困った。苦しい時間が過ぎ行く。

「店も。銭も。なんも」
「そんなん要らんのや――」
 





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