【寒天問屋】
真帆
真帆は店を出たところの番頭の腰にパッと抱きついた。いきなりのことに善次郎はよろけた。
「真帆家の嬢さん?」
「松吉とな。喧嘩してんねん」
「……それは珍しいだすな」
「真帆な、謝りたいんやけど、よう云わんの。番頭さん、今のと同じのやって、松吉に謝って?」
「え」
「お願いやで!」
風のように走り去った真帆の背中を見て、善次郎は愕然とした。
「――ええぇぇ」
真帆の信頼度アップ↑
井川屋の売上アップ↑
番頭のタックルで松吉骨折↓
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