【寒天問屋】


エンディング03



「旦さん。折り入ってお話が」

「なんや、善次郎。銀二貫も貯まったしな。わての体調もいい。気力もある。番頭のツンデレポイントが若干足らんのやけど、我ながらええ線きたと思うで」
「嫁にもらいたいオナゴができましてん。真帆、入り」
「はい」
「――え?」

 成長した真帆屋の嬢さんが座敷に上がると、松吉が泣きながら井川屋を飛び出した。和助は口をあんぐり開けたままだった。

「み……耳遠なってな。もう一ッ遍頼みます」
「真帆と夫婦になりまして、わてが旦さんの養子になりましたら大団円。文句ありまっか」
「歳離れすぎや」

 善次郎はにやっと笑った。主人はぎくりとした。

「十代のうちにトラウマもんの不幸が襲った時点で、わてにもフラグ立ってましたんや……」
「ブラック善次郎が降臨したな。可愛げを成長させんのが先決やったわ」
「あの流れでわてだけ何もないとか、天満の神さんも片腹痛い云うてましたで」
「ば、番頭っちゅうのはそんなもんや。おたなのために一生を捧げんのや。だいたい今回、天神さん拝んでないやろ!」
「真帆。ボケてきた旦さんに真実を云うたり」

 真帆はほう、とため息を吐いた。

「松吉の才覚ポイントが足らへんかったんだす。自信無くして、将来の約束も反故に」
「ああ……」
「もうちょっと道が違いましたら、うちにも違う人生が――」
「そやなぁ。せめて善次郎やのうて、わての嫁になるとかなぁ」
「旦さんの気力をもっと上げるべきだしたな。本当に残念なことで!」

 その後も井川屋はほどほどに繁盛し、跡取りが出来るまで時間がかかったせいで和助も長生きしたそうな。


※松吉は生涯独身を貫くはめになりました……。


めでたしめでたし

スズメ





data main top
×