【寒天問屋】


髪結い



「髪結床に行くと高くつくし。お里のために呼んだ廻り髪結いに剃ってもらうほどでもなかったんでな。頼みまっせ」

 善次郎は金盥に湯をはり、借り物の道具箱を開けた。

「うちも流石にそこまで貧窮してはおりませんけど、旦さん。手元が狂うて怪我させてしもても――堪忍してくれますやろな」

「月代はともかく髭くらいなら大丈夫やろ。昔はやってたんやしな。松葉屋はん処も女房が剃るて云うとった」
 





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