2−9 試練の先にはダウン




=相談室=


石田「滝島くんが俺に質問だなんてどうしたのかと思えば、勉強ではないと」

滝島「当たり前だろ、学年トップをなめんな!」

石田「本当にいやみですね。いつも滝島くんの答案は見ていておもしろくないですよ。学生なら学生らしく間違えてほしいものですが」

滝島「あはは…俺、不器用ですから」

石田「そうですか、話がずれましたね、とりあえず本題に入ってください」

滝島「ああ、実は…」

石田「……」

滝島「――――とういうことがあって、拓郎が心配なんだ。石田も、何かあったら、拓郎のこと守ってくれない?」

石田「そんなの言われなくても守りますよ。鈴村きゃんは俺の大切な人ですから。誰にも野蛮なことさせません」

滝島「わ、頼もしいです」

石田「いえ、そんなことはないですよ。俺って無力だから…」

滝島「え?」

石田「試練の先にはダウン」

滝島「はい?」

石田「滝島くんに贈る言葉です」

滝島「え、俺に?」

石田「ええ、いつか自滅するんじゃないかなって心配になります」

滝島「心配って」

石田「自分の気持ちに嘘をついて、友達のふりなんて、よくできるよなってことですよ」

滝島「ああ、あれは、ただ、あいつに笑ってほしいとかそんな理由で」

石田「一途ですね。俺も負けたりはしませんが」

滝島「…自信はどこから生まれるんだろうな」

石田「心から生まれるんですよ。きっとできるって思えばなんだって頑張れます」

滝島「そんなこと、ないですよ?」

石田「滝島くん?」

滝島「人って複雑な生き物なんだと思う」

石田「憶病ですしね、基本的に」

滝島「え?」

石田「ま、学生なんだから、恋だの愛だのかまけていないで勉学に励みなさい」

滝島「先生もな!」

石田「先生はもう、大人だからいいんですよ」

滝島「出た、大人の都合のいい発言!」

石田「こら、そうやって、大人を馬鹿にしたら、自分が年をとった時に、ダメージを受けますよ?」

滝島「石田がそんな深刻な話をしても似合わないな」

石田「そりゃあ、ね?」

滝島「え、ああ…そうだけど?」

石田「じゃあ、さっきの言葉は俺じゃない誰かに言われたと思って、ちゃんと覚えておいてください。いつか、きっと、身にしみることがあると思いますから…」





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