1‐11 いいじゃん。僕だし




豊田「あ、おかえり」

鈴村「……あんま、見ないで」

豊田「どうして? めちゃくちゃ色っぽい」

鈴村「昴、そんなことより、説明しろ!」

豊田「ああ。わかったよ。ちゃんとするから。えっとね。拓ちゃん。好きだよ。だから、危ない目に会う前に脅かそうとして」

鈴村「……」

豊田「いいじゃん。僕だし」

鈴村「あのな、昴。口で言えばいいだろ?」

豊田「言ってもわからなかったくせに」

鈴村「う…」

豊田「それに、これでわかったでしょ? いくら力強くても、こういう信頼からこんな写メとられたら抵抗できないこと」

鈴村「はい。すみません」

豊田「ま、そういうことだから、気をつけてね。初デート」

鈴村「は?」

豊田「拓ちゃん。忘れたの? 今日は委員長とデートでしょ」

鈴村「……………あ」

豊田「忘れてたの?」

鈴村「いや、用意しないとなぁ」

豊田「そんなに俺の、よかった?」

鈴村「う? 昴、なんか言った?」

豊田「ううん。何も〜」

鈴村「……な、昴。俺、どんな服きてけばいい?」

豊田「悩むんなら、何も着ずにいけば?」

鈴村「そうだ……ねって、誰が言うか!」

豊田「冗談だよ」

鈴村「はいはい」

豊田「……あ、ね、拓ちゃん。何処へ行くの?」

鈴村「聞いてない。ただ、空けとけ、とは言われたけど」

豊田「時間は?」

鈴村「…………あれ? 聞いてない」

豊田「それって約束になるのかな?」

鈴村「ならないよな! 昴っ」

豊田「だから、気安く抱き着くなって、教えたばかりだろ?」

鈴村「ん? 昴、なんか言った?」

豊田「いや、やっぱり待ってたほうがいいよ。委員長だから、きっと迎えにくるよ」

鈴村「えー、やだよ」

豊田「なんで?」

鈴村「だって、俺の休日は昴って決まってんのに」

豊田「馬鹿。押し倒すよ?」

鈴村「へ? 何を?」

豊田「わからないかな?」

鈴村「…いや、全然」

豊田「もう一回、やってあげようか?」

鈴村「何を?」

豊田「鈍感。そんなんだから、ダメなんだよ?」

鈴村「そうなん?」

豊田「……ま、そこがいいとこだし。しゃーないけど」

鈴村「昴っ」

豊田「だから、抱き着くなって」

鈴村「俺、昴が幼なじみですごく嬉しい」

豊田「は、ははっ」

鈴村「何。枯れた笑いかたしてんのさ」

豊田「いや、その信頼が嬉しくて嬉しくて」

鈴村「馬鹿じゃないのっ」

豊田「馬鹿はお前だよ」

鈴村「え?」

豊田「照れるなって言ったんだけど?」

鈴村「そうなんだ」

豊田「ん」






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