1‐6 擦り切れたボロボロ雑巾
=2ヶ月前=
滝島「だから、俺、好きなんだ」
鈴村「……でも、俺にとって満は大切な友達だから」
滝島「それでも、好きだよ」
鈴村「ぁ…で、でも」
滝島「逃げないで」
鈴村「……友達だって、満も言ってくれたじゃん。大切だって」
滝島「泣くなよ…」
鈴村「だ、だって、満…」
滝島「……拓郎は、友達のままでいたいんだ?」
鈴村「ぅん…」
滝島「じゃあ、賭けをしよう。期限は一年間」
鈴村「一年間…」
滝島「そう、一年間、お前は俺に笑いかけない。俺はお前を諦めない」
鈴村「一年間も?」
滝島「あぁ。俺がお前に冷たくされて、友達に戻りたいと願うか、好きだって囁き続ける俺に拓郎が根気負けして笑うか。どう? 一年間。あ、期限がきたら、ちゃんとスッパリ諦めるし。今までどおり友達に戻ろう」
鈴村「冷たくするの?」
滝島「うん。それで、納得する」
鈴村「……」
滝島「ようは、どっちが強くそうありたいと願うかってこと」
鈴村「…ごめ、んね」
滝島「拓郎は悪くないから、謝らないで」
鈴村「けど…」
滝島「これは俺のわがままだから。ね?」
鈴村「……わかった。一年間。一年間、冷たくするから。滝島」
滝島「好きだから大丈夫だよ?」
★…☆★☆…☆★☆…★
=男子寮自室=
鈴村「ただいま…」
豊田「おかえり…って、拓ちゃん。大丈夫?」
鈴村「ぇ、何が?」
豊田「擦り切れたボロボロ雑巾みたいな、顔しているから…」
鈴村「そう?」
豊田「そうだよっ! 本当なんかあったの?」
鈴村「聞いてくれよ、豊田」
豊田「うんっ」
鈴村「て、豊田…」
豊田「ごめんね。今すぐ片付けるから」
鈴村「おま、えぇ?」
豊田「こらぁ。拓ちゃんにはまだ早いよ?」
鈴村「てりゃっ!」
豊田「うわっ! 拓ちゃん」
鈴村「豊田。お前まだ若いんだから、こんなの見ちゃダメだろ!?」
豊田「……拓ちゃんこそ、僕のエロゲ取り上げてどうするの?」
鈴村「ぇ、あぁ…」
豊田「興味あるなら貸すよ〜?」
鈴村「いや、いい。俺、こういうのダメだし」
豊田「そっかぁ。拓ちゃんは、偏見の塊だもんねっ?」
鈴村「ぇ? あ…」
豊田「だって、そうでしょ?」
鈴村「…………ただ、俺は」
豊田「わかってる。そんなに悩まないでよっ」
鈴村「豊田…」
豊田「つれないな。いつまで、豊田呼ばわりなのかな? いい加減、名前で呼んでよ? いつもみたいに。僕たち幼なじみじゃん。気を使わなくていいからね」
鈴村「ぁ…」
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