覚悟

「んむ、ちゅ、ちゅ」

 顔の角度を変えて、何度も貪られる。舌を吸われ、くちゅくちゅと舐められて。私も必死で応える。博也くんの舌を、吸って。

「奈子ちゃん、顔トロトロ。可愛い……。ねえ、俺のこと好き?」
「ん、だいすき……」
「俺とキスするの好き?」
「っ、ん、だいすき……」
「俺とえっちするのは?」
「ぜんぶ、だいすき……」
「俺もね、奈子ちゃんのことも、奈子ちゃんとすることも、全部好きだよ。俺、今までの人生でこんなに好きになったのも夢中になったのも初めて……」

 とっても優しい顔でそんなことを言うから、嫌でもキュンキュンしてしまう。嫌じゃないんだけど。嫌なわけないんだけど。ずるいなぁ、もう。

「連絡できなかったこと許してくれる……?」
「許すも何も、はじめから怒ってないよ。仕事に一生懸命な奈子ちゃんも大好きだし」
「そんなに甘やかしたら調子に乗るよ……?」
「むしろ、甘やかして、ドロドロにして、俺と一緒じゃなきゃ息できないくらい甘々な奈子ちゃんになればいいと思ってるよ」

 博也くんと一緒じゃなきゃ息できないくらい、か。私はもう既にめちゃくちゃ甘やかされている自覚はある。こうやって連絡しなくたって全く怒られないし、むしろ心配してくれてるし。ちょっとわがまま言って夜中にラーメン食べたいと言っても、嫌な顔一つせずに出前取って一緒に食べてくれるし。

「博也くん、めちゃくちゃ優しいね……」
「だって奈子ちゃんのわがまま可愛いじゃん……。外でデートしたり出来ないし、嫌な思いもさせることあるかもしれないからさ、せめて一緒にいられる時は奈子ちゃんの好きなことしたいの」
「そんなのいいのに……」
「違うよ、奈子ちゃん。これはね、もっともっと奈子ちゃんに好きになってほしいっていう、俺のわがまま。だから、奈子ちゃんは思う存分俺に甘えて?俺はそれが嬉しいんだから」

 そう言えば、私がわがまま言う度、博也くんはとっても嬉しそうな顔をしている……。博也くんのめちゃくちゃ甘くてちょっと重い愛情を感じて、とっても幸せな気持ちになる。

「私も博也くんのこと、いっぱい幸せにできるように頑張るね」
「もう充分だけど、奈子ちゃんの気持ちが嬉しいからありがたく受け取る。一緒に幸せになろ?」

 一緒に幸せになる方法。それはずっと、一緒にいること。刹那的な時間じゃない。だってお互い仕事しないと生きていけないし、お互い仕事大好きだし、たまには友達と遊びたいし、博也くんだってこの前みたいに付き合いでクソみたいな飲み会に行かないといけないことだってあるだろう。
 そうじゃなくて、もっともっと長い時間。博也くんの仕事柄、まだあまり現実味はないけど。私の人生のゴールが決まった気がする。

「死ぬ時は博也くんに看取ってもらいたいなぁ」
「分かった。絶対そばにいる」

 少しだけ真剣な顔になった博也くんに抱きついた。先に死にたい。博也くんが死ぬところ見るのやだもん。博也くんにその苦しみを背負わせることになるけど、それを覚悟した上での返事だと思った。


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