再会

 次の日、昨日と同じ場所で利根さんが待っていた真っ黒のバンに乗り込む。それと同時、ぎゅうっと抱き締められた。覚えのある香りに、胸がきゅっとなる。

「奈子ちゃん、会いたかった……」

 耳に響く声は、大好きなもの。私もぎゅっと抱き締め返す。
 しばらくそうした後、三木村さんはそっと私を離す。眉を下げた三木村さんが少し可愛い。そっと頬を撫でる。その手を握り、三木村さんが唇を重ねてきた。

「んっ、ちゅ、ん……」

 唇を舐め、ぬるっと分厚い舌が入ってくる。口内を貪るように舐め回され、はっ、はっと息が上がる。

「奈子ちゃん、可愛い……会いたかった……」

 甘く囁き、三木村さんはその場に私を押し倒す。そして、思い出した。ここ、車の中……!し、しかも利根さんが……!

「ま、ま、」
「大丈夫、俺以外誰も見てないよ」

 気付けば運転席と後部座席の間に分厚いカーテンが閉められていた。窓にはスモークが貼ってあり、しかも外は真っ暗。誰からも私たちは見えない。

「でも声は我慢してね。俺以外に奈子ちゃんの可愛い声聞かせたくないから」

 そう言って三木村さんは私の服に手を入れてくる。お腹を撫でる手に流されそうになる。……けれど。

「三木村さん」
「なーに?」
「まず、話すことあるんじゃないですか?」

 私がそう言った瞬間、三木村さんがフリーズした。そして、どんどん顔色が悪くなっていく。え、え、と戸惑うほど、病的な色になっていって。

「つらい……奈子ちゃん以外の女と結婚なんて、想像しただけでつらい……」

 えーっと……、これは、喜んでいいところかな?

「ゆきえは、友達。どっちかというと男友達みたいな。でもちょっと理由があって……、奈子ちゃんに隠し事とかほんとにしたくないんだけど、俺がフェイク?みたいな……ゆきえは俺に会いにきたんじゃなくて、それで……」
「他の人に会いに行くのを手伝ってあげたの?」

 三木村さんが私の言葉を聞いて目を丸くする。

「な、何で分かったの……?!奈子ちゃんは、俺の全てを理解してるの……?!」
「え、だってフェイクって言ったし」

 そうかなぁと思っただけで言った、でもこんなに幸せそうな顔をしているからよかったなぁと思う。三木村さんはとっても感動したようで、私を抱き寄せる。感極まった表情で。

「やっぱり奈子ちゃんだ」
「え?」
「あの報道が出た時、すぐに会いに行きたかったんだ。でも今は他のスキャンダルが出ると大変だからっていつものホテルじゃない他のホテルで軟禁状態。完全に仕事とホテルの往復」
「そうなんだ……」
「奈子ちゃんから連絡来なくて不安だった」

 うわあんと泣き真似をする三木村さんに罪悪感が再び顔を出す。そうだよね、あんなに何回も連絡したのに返ってこないと不安だよね。しかも会える術もないのに。

「ごめんね?」
「今のごめんね可愛いからもう一回言って!!!」

 お互いマイペースだと会話が成り立たない。


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