つながり

「すごい……」
「広いでしょ、ここのお風呂」

 何とか立てるくらいまで回復してから、一緒にお風呂に入った。乳白色のとてもいい匂いの入浴剤を入れたお湯は、しっとりと滑らかに肌に馴染む。

「高級ホテルすごい……!」
「でしょ?俺のお気に入りなんだ。家はいっつもマスコミが張ってるけど、ここはセキュリティ固くて入ってるところ見られないし」
「へー……」
「家に奈子ちゃん連れ込んで半同棲っていうのも憧れるけど、会う時はほとんどここになるかな」
「ふーん」
「奈子ちゃんの家にも行ってみたいけど、マスコミにバレたらダメだからなぁ」

 芸能人も大変なんだ。背中を三木村さんに預けていると、項垂れた三木村さんが肩にちゅ、とキスをした。

「俺、結構料理得意なんだよ。奈子ちゃんに食べて欲しいなぁ」
「ふふ、男の人って女の子に料理作って欲しいって思うものじゃないんですか?」
「奈子ちゃんの料理も食べてみたいけどね。奈子ちゃん、料理得意?」
「料理するの好きです」
「じゃあ一緒に作ろ。それがきっと一番楽しいね」

 いつかそんな日が来るのかなぁ。自分の家にすら安心して帰れない三木村さんに、安心できる場所をあげたいなぁなんて烏滸がましいことを少し思った。

「あ、そういえば、今日芦屋くんのお店に私が行ったの何で知ってたんですか?」

 三木村さんが店に来た時、ドアを開けると同時に名前を呼んでいた。つまり、私がいるのを知ってたってことだ。

「ああ、もちろん尚に頼んでたんだ。奈子ちゃんが来たらすぐ連絡してって」
「私が行ってからそれほど時間経ってなかったのに、来るの早かったですね……」
「俺が行くまで必死で引き止めてって頼んでたんだ。たまたま都内にいてよかったよね、尚も俺も」
「ふふ」

 そんなに必死になってくれてたんだと思うと胸が熱くなる。ウジウジ泣き言言ってたとも言ってたな、芦屋くん。もっと早く会いに行けばよかったなぁ。

「あのね、三木村さん。わがまま言っていい……?」
「うん!なに?!」

 何でそんなに嬉しそうなんだろう……。ニコニコと私の言葉を待っている三木村さんに、思い切って口を開く。

「連絡先教えてほしいなぁ、なんて……」
「え?!そんなの当たり前じゃん!俺が聞こうと思ってたし!奈子ちゃんになら何でも教えるよ?通帳の場所も実印の場所も!!」

 それは教えちゃダメなやつ。ああ、でも、勇気出して聞いてよかった。繋がりが、またひとつ。


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