明日は休み

「そ、っか。うん、仕方ない。奈子ちゃんが嫌なら。でも俺、奈子ちゃんのこと諦められないし、いつか振り向いてほしいし、前言ってた通り友達から……」
「ちが、ちが……ひっ」
「えっ?!奈子ちゃん泣かないで!!」

 涙が溢れて上手く喋れない。本当に失礼なことをしてしまった。勘違いなんて言葉じゃ済まない。ちゃんと、向き合わせてほしい。これから。
 立ち上がり、涙を拭ってくれる三木村さんの手を握る。大きくて、温かくて、優しい手。

「私、もう三木村さんに会えないと思ってました、だって、ホテルで待っててって言われたの聞こえてなかったから、置いて行かれたと思って、あんなに気持ちいいえっちしたのに、三木村さんにとって私は、その辺にいる特別でもなんでもない女だって」
「奈子ちゃん……」
「一回えっちしたら終わりだって、ホイホイついてきた軽い女だって、そう思われてるって」
「うん……」
「三木村さんはきっとモテるから、一夜限りの関係なんてよくあるだろうなって。あんなに優しく名前呼んでくれたのに、私の名前なんてもう忘れてるって」
「忘れるわけないのに……」
「本当に、失礼なこと考えてました。本当にごめんなさい」
「奈子ちゃん、ギュッてしていい?」

 勢いよく首を縦に振る。すぐに大きな腕で体を包まれる。温かい。安心する。嬉しい……。

「大好き、奈子ちゃん」

 優しい声。もう誤解しない。この人を、三木村博也という人を。私はもう、見失わない。

「オエ、鳥肌立つわ」

 その声にハッとする。ここ、芦屋くんの店じゃん。吉村もいるじゃん……!

「み、三木村さん、ここ、外!」
「やだ」

 胸を押しても、三木村さんは腕の力を強くするだけ。やだって、可愛いんだよもうー!!

「奈子ちゃん、明日仕事?」
「あ、明日は休みでいいっす。コイツ3ヶ月もろくに休み取ってないんで」

 か、勝手に決めるな吉村!!何故か自己紹介をし合っている三木村さんと吉村。有給取るって伝えとくから、とバチコーンとウインクされた。

「俺も明日休みなんだ。だから今日こそ、いっぱいえっちして、一緒に寝て、一緒にご飯食べて、一緒にお風呂入って、またえっちして、ディナー食べて、またえっちしよ!」
「え、えっと……」
「もちろん、恋人同士の甘ラブえっち。いいよね?奈子ちゃん」

 い、色気がすごい……!頷くほかなくて、頷いた。でも何だかすごく、幸せだ。


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