恥ずかしい

「最近見つけた店でさー、いいだろここ」

 で、何で私は芦屋くんのバーにいるのかな……?!吉村に連れて来られたお気に入りの店、こんな場末のバーだなんてそんな偶然ある……?!
 芦屋くんは特に何も言わなかった。私を見て一瞬鼻で笑った気はするけど、相変わらずの無表情だ。

「あのさー、こんな場末のバーじゃなくて、居酒屋行こうよ」
「場末じゃねーわ」

 私の言葉に言い返した芦屋くんを見て、吉村が驚いた顔をした。「失礼しました」と芦屋くんが吉村に謝る。私も一応お客さんなんだけどなー!!

「え、何、知り合い?」
「ううん、全然知らない人」
「お前、逃げたらしいな」

 突然ぶっ込んできた……!デリケートな話題を……!

「に、逃げてなんか……!帰っただけだよ。え、何か聞いたの?」
「別に」
「やっぱ知り合いじゃん」

 そうだ、一瞬吉村の存在忘れてた。吉村の前でこんな話しちゃダメじゃん。

「いや、あの、ちょっとね……」
「何、あの人セックス下手だったの?」
「な、あなた突然何を言い出すのかしら?!」
「セックス?て?」

 だから吉村いるんだってば!吉村に知られちゃダメでしょ!だって、相手は三木村さんなんだから!

「ほんと、俺の気も知らねぇで男なんて連れてきやがって」
「え、何、この人お前の彼氏?」

 芦屋くんが言っている意味はよく分からないけれど、吉村に勘違いされるようなことは言わないでほしい。芦屋くんと私には何の関係もない。

「おい、もう逃げんなよ」
「え?」
「ウジウジウジウジ泣き言聞かされるのはうんざりなんだよ」
「奈子ちゃん!!」

 バン!と大きな音を立ててドアが開く。それと同時に焦ったような男の人の声。その声に聞き覚えがあったから、私は反射的に立ち上がった。

「奈子ちゃん、奈子ちゃん……」
「え、三木村博也じゃん!お前知り合い?」

 息を切らした三木村さんは眉を下げて私の前に歩いてくる。名前……忘れられてなかった……

「何で……、俺、奈子ちゃんに嫌なことした?」

 とっても悲しそうな顔をするから、まるで、三木村さんも私に会いたかったのかって……

「俺がしつこかったから?奈子ちゃん、気持ちよくて死んじゃうって言ってたのに、いっぱいイかせちゃったから?」
「み、三木村さん?」

 とてつもなく恥ずかしいこと言ってる自覚ある?芦屋くんが軽蔑するような目で見てる!!気付いて!!

「潮いっぱい噴かせちゃったから?奈子ちゃん辛そうだったのに、最後までしちゃったから?一瞬生で挿れちゃったから?勃起しすぎててキモかった?」
「め、めちゃくちゃ恥ずかしいからその辺で勘弁してください……」

 手で顔を隠す。もう芦屋くんと吉村の顔見れない……。

「俺、ホテルで待っててって言ったよね?仕事終わって急いで帰ったら、奈子ちゃん帰っちゃってたから……、俺、相当嫌なことしたのかなって」
「ホテルで、待ってて……?」

 そんなこと言われた記憶がない。


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