服を着て唯香が出て行く。呆然として何も出来なかった。俺はまた、唯香に嫌われるのか。
「謝らなくていいの」
日向の言葉にハッとする。そうだ、俺、酷いこと言った。響と何かあったんだと思うと、頭に血が昇って……あっ!
「っ、響、起きろ!お前唯香に何したんだよ!」
「ヤス兄うるさい……一緒に寝ただけだよ」
「裸でか?!お、お前もしかして、唯香に酷いこと……」
「唯香が勝手にやったんだよ」
唯香が、勝手に……?もちろん、この八年間一人も男がいなかったことはないだろうし、みんなの話で唯香がよくモテることは知っている。でも誰とでも簡単にそういうことをするような子じゃない。
俺に迫ってきた時だって、色気はすごかったけど手は震えてたし……って、今はそんなことどうでもいいんだよ!あの夜の唯香を頭から必死で追い払う。も、もしかして響にもあんな顔を……
「響テメー!」
「あー、もうほんとうるさい。勝手に唯香が脱いだんだよ、暑いとか言って」
「ゆ、唯香が目の前で脱いで抱きたくならねー男はいねーだろ!」
「ふーん、兄貴は抱きたくなったんだ」
「お、俺、俺は……」
日向の冷静な言葉に自分の言葉を思い出す。え、お、俺は……。目の前で迫る唯香を見て、どう思った?……そうだ、触れたいと思った。俺の腕の中で乱れる唯香を見たいと思った。でも、その前に会った大学の後輩とかいう仲のいい男。あの男が頭に浮かんで。俺の他にもあんな顔を見せた男がいるんだ。そう思うと、イライラして。それに、自分の気持ちもよく分からないままそんな関係になってしまったら、唯香を傷付けると思った。
「俺はならないよ。だって唯香は幼馴染だし」
「お、幼馴染だけれども、」
「まー、確かにいい女だよね?好きになる可能性もなくはない」
「そうだねー。唯香はいい女だし抱きたくなるのも……痛い痛い痛い、ヨリちゃん足踏んでる!でも俺にはヨリって言う最愛の妻がいるからならないよもちろん!」
唯香は、幼馴染だ。でもその前に……女の子だ。そう思うようになったのは最近だけど。
「まず謝るべきじゃない?」
「いやまず地獄に落ちるべきでしょ」
美晴のきっつーい一言に落ち込みながら、俺はちゃんと謝らないとと思ったのだった。