おまけ
始業時間直前になって立花さんがやって来た。それはもうスッキリした顔で。仲直りできたみたいでよかったです。口に出したら面倒臭そうだから心の中だけで思っておく。
「た、立花さん、あの」
俺に話を聞いて欲しそうにチラチラと見てくる立花さんを無視していたら、花ちゃんが立花さんに声をかけた。今の立花さんに声をかけるなんて勇者だ。
「さっきの人、誰ですか?ま、まさか恋人とかじゃ……」
「彼女だよー。あれ、俺彼女いるって結構言ってるけど、知らなかった?」
花ちゃんは目に涙を溜める。そして、立花さんの服をきゅっと握った。
「ショックです……」
で、何なの。俺がこういう子苦手だからイライラする。好きなら好きってハッキリ言えよ。ただし、仕事が終わってからな。
「うん、まぁ、花ちゃん彼氏のこと俺に相談して来たのに簡単に心変わりするような子だったんだって俺はそれがショックだけど」
「そ、それはっ」
「あ、もしかして彼氏いんのも嘘だった?あー、そっちの方が幻滅ー。俺結構親身になって聞いてたのになー」
「っ、」
唇を噛む花ちゃんを見下ろす立花さんの目は冷たい。早坂さんに向ける目があまりにも優しかったから、更に。さっきの立花さんを目の前で見ていた花ちゃんも、その違いはきっと分かっていて。目に溜まっていた涙が引いていく。
「ブスな彼女とお幸せに」
とんでもない捨て台詞を吐いて花ちゃんは行ってしまった。「ヨリがブスに見えるなんてあの女目おかしいな」なんてブツブツ言っている立花さんが不意に俺を見た。あ、やべ、目合った。
「三崎ー」
「……何ですか」
「中出ししたら引っ叩かれた」
「……」
それでニヤニヤしてるとか、まさか立花さんドMなんですか。聞きたくなかった。ため息を吐きながらも安心している俺がいた。やっぱり二人は、一緒の方がしっくりくる。