好きな人

 神社の前で待ち合わせをした。地元のお祭りだから、知ってる人も当然多い。立花くんと付き合い始めて1ヶ月。一緒に帰ったりはしてるけど、グループでいることが多いからあまり広まってはいないみたいだ。

「立花くん誰と行くの?悠介くんたち?私らと一緒に行かない?」

 神社に着くと、そんな声が聞こえてきた。見知った顔の女の子たちの中心に立つ立花くんは、ごめんと手を合わせていた。その女の子の中に、立花くんのことを好きだと噂のある女の子がいて、何となく尻込みする。私が彼女だって自信を持って言えるほど、まだ深い付き合いじゃない。
 告白された時から、立花くんが私のことを好きだなんて嘘なんじゃないかって信じられないでいる。今までにできた彼氏は二人。立花くんみたいにみんなの中心にいる人じゃなかったし、私もそうじゃないから。どうして立花くんが私を好きって言ってくれたのか分からない。
 いつも余裕そうな立花くんと、お祭りに誘うのもドキドキなくせに余裕ぶっていた私と。釣り合わないなーって、いつも思う。
 ちゃんと断ったらしい立花くんがキョロキョロと辺りを見渡した。行かなきゃ、でも足が動かない。不意に立花くんと目が合った。立花くんがふわりと笑う。ぎこちなく笑って、彼の元に歩き出した。

「お待たせ」
「ううん。浴衣可愛い」

 ナチュラルにそんな褒め言葉が出てくる辺り、立花くんはすごいと思う。この人がモテるのは顔がいいからだけじゃない。
 行こっか、と言われて歩き始める。何度か会った知り合いには「今日はアイツらと一緒じゃないんだ」と言われて、まさか私たちが付き合っているとは誰も思わないようだった。

「何か食べる?」
「うん、わたあめ食べたいな」
「わたあめは……あっちか」

 ドン、と人に押される。立花くんが遠くなる。ああ、服の裾でも握らせてもらえばよかった。本音を言えば、手を繋ぎたかったけど……。
 立花くんは背が高いからよく見える。また女の子に囲まれている。こんなことばかり気にして。やだなぁ……。
 立花くんがキョロキョロと辺りを見渡した。このまま人混みに消えたら、立花くんは探してくれるかな、なんて。そう思う前に立花くんは私を見つけ出して、そして。

「やっぱり手繋いどかないとはぐれるね」

 自然と手を取った。ドキンと胸が高鳴る。大きくて、熱い手だ。こうやって触れるのは、初めてで。甘いときめきが身体中に広がっていく。
 立花くんはさっきの女の子たちに「彼女と一緒だから」とはっきりと言う。女の子たちの視線は痛かったけれど、隠したいわけじゃなかったんだと少し安心した。
 無事にわたあめを買って、二人並んで花火を見た。少し上にある立花くんの横顔が花火に照らされて綺麗だ。
 一緒にいると、不安になる。でも、それよりも。楽しいとか、幸せとか、そんな気持ちが大きい。私は、立花くんのことが好きだ。

(16/09/01〜16/09/13拍手掲載)

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