君と私の真意
「ちょ、待っ、」
そんな三上の言葉を遮るように何度もキスをする。部屋に入って貪るようなキスをして、そのままベッドに突入。この前三上に「ドラマじゃないんだから」なんて言われたシチュエーション。……やってるのは三上じゃなくて私だけど。
「みかみ、みかみ、みかみ……」
「花田、あの、ほんと……」
「花田って呼ぶなぁぁぁ」
今、私は勢いだけで行動している。そうやって三上が作る壁を感じるために心が折れそうになるのだ。だから、だからお願い。私を受け入れて。
「……舞子」
「っ、」
「ちゃんと話すから、ちょっと待って」
泣きそうになる私を宥めるように、三上が私の頬を撫でた。手の温かさが私の心をゆるゆるのスライムみたいにして、我慢しきれなかった涙がポタリと三上の頬に落ちた。
「……流されてる、だけなんじゃないかと思った」
「ながされ、てる……?」
「うん。それなりに片想い歴長いからさ。俺がプロポーズして、舞子が俺を好きになってくれるまで、スムーズすぎて怖かった。今まで俺のこと全く意識してなかったのに、そんな急に好きになれるもんかなって」
た、単純でごめんなさい……。プロポーズされてすぐに好きになってごめんなさい……。
「いや、謝るのは俺の方だ。俺はそんな舞子を利用してたんだ。舞子が流されやすいの分かってて、押して押して最後まで押し切ったら俺のこと好きになってくれるんじゃないかって……」
「三上……」
「全部貰った時、罪悪感でいっぱいになった。もし舞子に他に好きな人が出来るなら、その人の方がいいんじゃないかって思ったんだ」
私を突き放した三上の、あの時の本心を聞いて胸が痛くなる。私は何も知らずに、気付かずに、恋人が出来たことに浮かれ、三上の気持ちを考えようともしなかったのだ。
「み、三上ぃ……」
「泣かないでよ」
えぐえぐと泣いていると、三上が苦笑いした。泣くしかできないなんて、嫌。三上にちゃんと、私の気持ちも聞いてほしい。
「ち、ちが、ちがあぅぅぅぅ」
「え?」
「ちがっ、ちがう、ちがうう、ゲホゲホ」
「ちょ、落ち着いて」
「三上だから、なのにぃぃ」
「え、」
押されたら誰でもよかった?そんなわけない。婚活パーティーで連絡先聞かれても、デートに誘われても、ピンと来なかった。例えそれがイケメンでも。
三上といると安心した。居心地が良かった。ただの同期だった、はずなのに。
「三上だから、好きになったの。だって私知ってたもん。三上が優しいことも、頼りになることも、全部知ってたもん」
「舞子……」
三上が私の後頭部に手をやって、自分の方に近付ける。待ちに待った三上からのキス。でも。
「まだ話終わってないぃ!」
「え、ごめん」
「三上だから好き!三上は何も罪悪感なんて持たないで。私が選んだの。私が三上を好きになること選んだんだから」
「悪い、もう限界」
ぐいっと引き寄せられて唇を食べられた。激しく、情熱的に。キスに夢中になっているうちに、反対にベッドに押し倒される。
「……舞子」
「な、なに」
な、なんかめちゃくちゃ恥ずかしいんですけど。三上の顔すっごい甘いんですけど。とろけそうな顔してるんですけど。何なの。何なの何なの。
「あの人に嫉妬してたのも、ちょっと本当」
「えっ」
さっき辰巳くんに貰ったコーヒーは、絶対に見つからないように鞄の中にしまっておこうと思った。