三上くんは不可思議

「今日のおっひるっはなっにかっなーるーるるるるるるーるるるるるるーるーるーるー」
「後半ものすごく聞いたことあるメロディーだ」
「……あ」

 三上と一緒に廊下を歩いていると、この前三上に告白していた女の子が前から歩いてきた。思わず三上を振り返る。三上は彼女に気付いているのかいないのか、いつもと変わらぬ様子で「なに?」と聞いてきた。
 こういう時、『彼女』というものはどういう対応をしたらいいのだろう。この人は私の恋人よっ!とこれ見よがしに腕を組むとか?……いやいや性格悪いな。嫌な女だ関わりたくない。
 この人は私の彼氏なのでもう告白しないでください?……うーん、好きになるのも告白するのもその人の自由で、しかも止めたら止めるだけ意地になる気がする。抑圧されたほうが気持ちが爆発するって言うもんね。
 平然としている。……彼女としての余裕を見せられる上に三上に性格の悪さがバレない。……これだ!!

「舞子?何立ち止まってんだよ行くぞ」

 私がごちゃごちゃ考えているうちに三上が私の目の前で立ち止まって顔を覗き込んでいた。うう、そのちょっと呆れたようで優しい目、大好きです!!手を包み込むように握られて、三上は歩き出す。なんだか子宮がキュンキュンしている。発情してる。私はいつのまにか三上専用の雌豚になったようだ。

「え……?舞子って呼んだ……?」

 すれ違ったあの女の子がそう呟いていたことに私は全く気付いていない。

***

「今日はコンビニだけど許してな」
「い、いえ、三上と一緒に食べられるだけで感謝感激です」

 三上が私を見てふっと笑う。だからやめてってばその顔!濡れるんだよ!雌豚なんだよ!笑顔は当然、横顔もおにぎりを持つ指も昼休みだからと着崩したスーツもちょっと緩んだネクタイも全部全部かっこよく見えるんだからすごい。三上を好きになる前、私はどうしてこんなにかっこいい人相手に普通でいられたんだろう。

「舞子、食べねーの?」
「た、食べる!」

 やべえ、幸せでご飯が喉を通らねえ。

「どした?体調悪い?もしかしてまだ痛い?」
「いっ、うん、たまにちょっと痛いけど全然平気。体調も悪くないよ」
「ふーん」

 そういえば、私の気持ちが三上大好きに変わったきっかけって何だろう。やっぱり告白?告白されたからと言ってこんなに好きになるもの?告白されたの中学生以来だから分からない。でも中学生の時も告白されてちょっと気になっちゃったもんね。その後向こうにすぐ彼女ができて終わったけど。もう一回何だかいい感じになったことがあるような気がするけど……いいや、全然思い出せないから思い出すのやめよう。

「……って、舞子、ちゃんと聞いてる?」
「うえっ、ごめん、何?」

 私がボーッとしている間に三上が何か話していたらしい。全然聞こえてなかった。三上は無表情でじーっと私を見た後、「ううん、何でもない」と言った。

「そういえばさ、さっきいた辰巳くん。なんかイケメン……」
「舞子」

 イケメンなのに坂井の様子がおかしいの、と言おうとしたのに三上が突然立ち上がって私の手を引いた。ちなみに今日のランチの場所は人気のない会議室だ。屋上ではない。

「どしたの?」
「やりたい」
「……えっ」

 机に押し倒される。いつもの三上らしくない。ちょっとだけ怖い。

「み、三上?ちょっと待って、あの、」
「……」

 なんで何も言わないの?ちゅうっと首筋に吸いつかれる。さっきまで三上にキュンキュンしてたのに、今は恐怖で体が竦む。

「三上、三上、やだ……っ」

 と、次の瞬間三上が起き上がった。

「他に好きな奴できたら、あのプロポーズなかったことにしていいから」
「え?」

 なかったこと?え?どういうこと?

「無理に俺に付き合わなくていいってこと」
「……」

 無理に?三上には私が無理して三上と一緒にいるように見えてるの?

「待つからよく考えて」

 三上はそれだけ言って部屋を出て行った。混乱して訳が分からない。なかったことになんてできるわけないのに。三上の気持ちが分からない。

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