堕落した生活 | ナノ



 どうやら疲労により、少しの間寝ていたらしい。「あ、起きた」と横から声がしたのに驚いて、上半身を起こした。その時、ぱさりとかけていた毛布が落ちて、ようやく事態を掴めた。慌てて手繰り寄せると、「別に気にする程でもないよね」と嫌味を言ってくる。

「オレ、暫く家出るけど」
「はい?」
「どれくらいかかるか、わからないんだよね」

 一体、何の話かわからず首を傾げると「キルも探さないといけないし。予想はついてるんだけど」……拷問されていたんじゃないの?

「あの、それって」
「うん、家出したんだよね。母さんとミル刺して」
「刺した? ……捕まえて、来れなくなったんじゃ」
「あれ、嘘。どんな反応するかなって」

 ……どうして、そんな嘘を。だったら、既にキルアくんはここにはおらず外の世界に出ていった。そして、血はキキョウ様かミルキ様のものだった。イルミ様は家を空けると言っている。なら、わたしはどうすればいいのだろう。

「そしたら泣いちゃうし、困ったよね」
「あ、あれは!」
「でも、その後オレの為にも泣いてくれたから。堪らない、そういうの」
「え、何、どういう?」
「無意識に、オレを求めてくれてるんじゃないの?」

 イルミ様はそう言うと、口を耳元に寄せて「さっきの全部、母さんに見られてるんだけど」「……えっと、はい?」「すっかり忘れてたんだけどさ、逃げる?」と、囁く。そういえば、キルアくんがキスをどうこうとか言われたよね、わたし。さっきのというのは、もちろんさっきの、アレ?

「イ、イ、イルミ様!」
「うん」
「ちょっと、あの、恥ずかしくて、うわー!」

 思い出して、顔が火照る。ヤバイ、ヤバイどうしよう。思わず顔を手で覆うと、「どうせ、ここにいてもやることないよね?」と問う。わたしは全くその顔を見れずに、コクコクと頷いた。

「決まり。着替えて外に出て」
「え?」
「シャワーは後で。もう母さん来ると思うよ」
「うそ」
「あ、もう来たかも」

 イルミ様が毛布ごとわたしを抱えて、窓から外へと出る。急に夜風に晒されて寒い。それよりも、この格好が酷すぎるが文句1つ言える立場でないことは、初めからだ。車の後部座席にそのまま押入れられると、急発進する。

 行く先もわからず、わたしはゾルディック家の敷地から出ることになる。2週間と少し、短い割には濃い日々を過ごしたこの場所と別れを告げる。

 



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