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今日1日の授業を終えて、真っ直ぐ家に帰る。…なんて事はせずに、裏山へ向かう。
「…こんにちは〜」
小さくそう言って草むらに顔を出せば、そこには数匹の…
「にゃあ」
「みゃあ」
「にゃー」
猫、猫、猫!子猫!
「う〜っ、可愛い〜っ!」
こちらを見上げる子猫の側に座れば足に体や顔を擦り寄せて来てくれる。
「にゃ」
「みゃあ」
「うんうん、今日も暑いね。でもここは涼しいね」
上を見上げれば空。というのはあまり見えなくて、代わりに緑の葉が見える。そこから暑い暑い日差しが少し降り注ぐ。
「キャットフードは今日ないんだけど、代わりにミルクがあるよっ」
鞄からパックのスキムミルクを出し、家から持ってきた小皿を数枚出せばそこにもう緩くなったスキムミルクを入れる。本当なら猫用のミルクが望ましいのだが、少しそこまで手が伸びなかった。
「遠慮しないで沢山飲んでね」
美味しそうにミルクを飲む猫を見て笑う。可愛いなぁ。
「やっぱ柴崎さんだ」
「へ?」
声のした方を向けば、
「カルマくん!」
「やっほー」
ポケットに手を突っ込み草むらの向こうから体を半分出して柴崎を見るカルマがいた。
「こっち行くの見えたからさ。何しに行くのかなって思って」
へぇ、猫か。と言えばカルマは彼女の側に行きゆっくり隣に座った。
「この猫怯えないんだ」
「きっとカルマくんは大丈夫な人だって分かるんだよ」
ねー、と猫に向かってそう言えば、同意するかのように子猫達はみゃあみゃあと声を上げた。その様子をカルマは見れば子猫の飲むミルクに目を落とす。
「これは柴崎さんが用意したの?」
「うん。スキムミルク!本当なら猫用のミルクが良いんだけど、ちょっとそこまで手が行かなくって…。だからこのミルクにしたんだ」
「普通のミルクはあまり良くないもんね」
「うん」
猫の頭を優しく撫でれば飲んでいたのを中断してその手に擦り寄ってきた。
「ん〜っ、可愛いなぁ」
癒されるってきっとこういうこと。可愛いものを見ると、本当に心から癒される。
「…なんか癒されるね」
「だよね!可愛いよ〜猫!」
「猫もだけど、柴崎さんも」
「え?」
猫から目線を外してカルマを見れば、彼は胡座をし手を後ろについてそちらに体重をかけていた。
「猫も可愛いし癒されるけど、そんな猫と戯れる柴崎さんを見るのも十分癒される」
その言葉を聞いて夏の暑さとは無関係に頬が熱くなった。
他意はない!他意はない!今ここに猫がいるからそう言ったんだっ。他意はない!
そう言い聞かせ、カルマから目線を外して猫に向ける。
「そ、そっか」
「うん」
蝉の声だけが聞こえて、それがこの沈黙を少し守ってくれた。
「この猫は前からいるんだ?」
「え?あ、うーん…私も見つけたの一週間前くらいで…」
「へぇ…。てことは、テスト最終日くらい?」
「うん。たまたまここに来たら居て、そこからこうやって放課後会いに来てるの」
そしたら思いの外懐いてくれて、それが嬉しくってこうして毎日のように顔を見せに来ている。
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