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「親猫が居ないみたいで…。いつ来てもここにいるから」
「…じゃあ柴崎さんがお母さんだ」
「ふふっ、子猫のお母さんに就任っ」
ママだよ〜と猫の頭を撫でればその猫達はミルクを飲み終えたのか、柴崎の足の上に登ってくる。
「う〜っ可愛い…っ。見てカルマくんっ。この必死に私の足の上に登ろうとしてる姿!」
「ははっ、完璧な母親じゃん」
「もう私この子達の親になるっ」
「じゃあ柴崎さん母親で、俺父親ね」
「カルマくんが父親かぁ。良かったね〜っ、お母さんとお父さんが今出来たよ!」
うりうり、と登りきれた猫達を撫でる柴崎をカルマは笑って見る。
気付いてないのか、なんなのか。さりげなく夫婦設定にしたことについて。まぁ今まだ気付かないでいいか。子猫と戯れる彼女を見ているこの時間をのんびり過ごしたい。
「ん?」
「懐いたね、その猫ちゃん」
カルマの足に前足を乗せてうにゃ〜と言いながら登ろうする白の子猫。
「頑張れ頑張れっ。あともう少し!…あ〜っ、前足もう少し前に…っ。そそ!あとちょっと!」
「…応援してんの?」
「応援してるの!…あ!乗れた!頑張ったね〜っ」
その声で自身の足を見れば確かに。登りきれた猫はこちらへと向かってき、お腹あたりに顔を擦り寄せてきた。
「なんかこの猫柴崎さんみたい」
「ええ!?私カルマくんに擦り寄ったことあったっけ!?」
「ないけど、この愛嬌あるところとか、白いところとかさ」
「そうかなー」
確かに色は白い方。だからこの夏の日差しなんてのは正しく天敵で、きちんと日焼け止めを塗らなければシミになるし、色が白いからこそ目立つ。
「ビッチ先生にすごい気に入られてんじゃん」
「イリーナ先生優しいよ。色んな話聞かせてくれるし、面白いし、あそこのお店は良いとかここのケーキは美味しいとか!」
「女子トークみたいなの?」
「うん!私たちが知らないようなところ知ってるから、大きくなったら行きたいなぁって思うんだ」
「どんなところ教えられんの?」
「んー、ちょっとお高いタルトのお店とか!有名どころのフルーツ使ったタルトだから少し高いの!」
「1ピース500円くらい?」
「ううんっ。えっと、イリーナ先生が食べたのは…1ピース1200円とか…」
「たっかー…。流石ビッチ姉さん。金銭感覚違うね」
「それは、ちょっと思ったけど…でも食べてみたいなって思うよ」
きっとほっぺた落ちちゃうくらい美味しいんだろうなーとそのまだ見ぬタルトに思いを馳せる。イチゴタルトかな、マンゴータルトかな。夕張メロン?白桃?マスカット?それとも全部乗せかな。どれでも食べれるけど、1番はイチゴタルトかなー!王道!
「じゃあ、地球救い終わったら行こうよ」
「カルマくんと?」
「うん。いや?」
「…ううん!全然!でも良いの?」
「俺は柴崎さんと行けるなら全然気にしないよ」
「…っふふ、そっか。私もカルマくんとなら気にしない」
でもなんで地球を救い終わったらなの?と聞けばカルマは自分の腹の上に乗る猫の喉を擽りながら口を開く。
「その方がゆったり出来るでしょ。一応その頃なら受験だって終わってるし。頑張った自分達にご褒美みたいな」
「ご褒美か〜。なら、ちょっと高いくらいのタルト食べても良いかなー…」
「柴崎さんはどのタルト食べたいの?」
「んー!欲を言えば、白い苺のタルトとか」
「白い苺?赤じゃないんだ」
「白い苺ってすっごい甘いらしいの!普通の赤い苺より甘いって聞くよ」
「じゃ、その白い苺のタルトにしよっか」
「カルマくんは?食べたいのないの?」
「んー?柴崎さんがそこまで言う白い苺が気になるからそれで良いよ」
「そっか。ふふっ、楽しみだなぁ」
早く食べたいね、って猫を抱き上げ話かければ、その猫はこちらに手を伸ばしてきた。
「ん?…わっ、はは!擽ったいよ〜」
抱き上げたまま自分の方へ寄せれば身を乗り出して頬を舐めてきた。
「もー。っわ!え!」
「ほら、こっちの猫も構って欲しいみたいだよ」
「カルマくんに懐いてたんじゃないの?擽ったいよーっ」
両頬を猫に舐められ擦り寄られる。1匹は柴崎が抱き上げる猫。もう1匹はカルマが抱き上げた猫だ。
「えい」
「っ擽った、」
「でしょ」
自分の抱き上げていた猫をカルマに向ければその猫は彼女にしたように彼の頬も舐めた。
「でもそろそろ帰らなきゃね」
「いつもこの時間に帰るんだ」
「うん。…じゃあまたね。明日はご飯持ってくるねっ」
地面におろし頭を一つ撫でれば立ち上がる。それを見て、カルマもまた猫をおせば喉を軽く擽った。そして立ち上がる。
「ねぇ、また明日も来ていい?」
「来てくれるの?きっと猫ちゃんも喜ぶよ!」
是非会いに来てあげて!と笑っていう彼女に心の中で笑う。猫にも会いに行くよ。でも、1番会いたいのは君だよ。
「猫じゃらし持って行こうか」
「それいいね!」
話しながら去る2人の子猫達は「またね」と言うかのように鳴いて見送った。
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