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一つの癖が、偉いことを招く。
「烏間先生」
「?」
烏間は横から声をかけられそちらを向く。
「お前か。なんだ」
「一つお尋ねしたいんですが宜しいですか?」
「?…あぁ、構わないが」
「柴崎先生って集中力凄いですよね?それって声を掛けないと気付かないくらいですか?」
「…そうだな。事務仕事をしている時は特にそうだ。それがどうした」
「いえいえ。聞きたかっただけです。では」
「?」
それだけを聞くと殺せんせーは烏間の側を離れた。残された烏間といえば、よく分からん。といった顔をしていた。
「…………」
書類片手に廊下を歩く柴崎。目は手元の書類に向けられ、集中しているのが伺える。そんな彼を離れた壁から見ていたのが…
「(ヌルフフフフ。居ましたね、居ましたよ。…柴崎先生!集中されてますねぇ。手元の書類から目を離さずゆっくり歩かれている。烏間先生からちゃんと教えて頂きましたから確認済みです。…するなら、今ですねぇ。ヌルフフフフ!)」
殺せんせーだ。彼が良からぬことを考えているのはよく分かる。そして動き出す。ゆっくりゆっくり柴崎の後ろへと。普段話しかける距離まで来てやっと声を掛ける。
「柴崎先生」
それにやっと気付き、柴崎は振り向く。そんな彼に向かって…
ブシューーっっ!
「っ!?」
何かを吹き付けた。そう、何かを。
「ッゴホッ…っゴホッゴホ…っ」
突然のことにそれを吸ってしまった柴崎は咳き込む。口元に手を当てて何度か咳き込むと、何故か視界が揺らぎぐらりとする。思わずその場に座り込む。
「ヌルフフフフっ!やりました!やりましたよ〜」
「っ、」
嬉しそうな殺せんせーの声に、未だ薄い膜を張る煙の中で座り込む柴崎。その時に、たまたまそこを生徒が通りかかる。
「え…け、煙?」
「てか…殺せんせーに、あれは…」
「柴崎先生…?」
「座り込んでねぇ?」
「……烏間先生呼ぶよ!」
「あ、あぁ!」
「岡島くんと菅谷くんと矢田さん倉橋さんは柴崎先生のところに行ってあげて!」
「分かった!」
「おう!」
片岡の指示で言われた四人は柴崎と殺せんせーの元へ。片岡と磯貝は急いで烏間の元へと走った。
「柴崎先生!殺せんせー!」
「先生何したんだよ!」
「てか、何この煙!」
「スプレー…?」
「おや。岡島くん、菅谷くん、矢田さん、倉橋さんじゃありませんか」
「「「「じゃありませんか。じゃない!!」」」」
生徒四人は殺せんせーに詰め寄る。何した!と。そこに烏間を連れて片岡と磯貝が走ってくる。
「柴崎!」
「あ、烏間先生!」
烏間は駆け寄ると柴崎の元へ。体を支えて疑問に。何か、違う。いつもと。
「気付きましたか?烏間先生」
「……お前まさか…」
「そう!柴崎先生の癖を利用させていただきました!」
「癖?」
「てか、何したんだよ殺せんせー」
「ヌルフフフフ…」
そしてやっと口元から手を離した柴崎が顔を上げる。本人も何故か身に覚えがあるこの感覚に…?となる。
「…?」
「…柴崎…、お前…」
「せ、先生…まさか…」
「殺せんせー…」
「だって前の時先生少ししか見れませんでしたからねぇ」
柴崎先生の女性版!!
喜ぶ殺せんせー。沈む柴崎。頭を抑える烏間。唖然な生徒達。
通りで、通りでなんか…身に覚えのある感覚と、見覚えのある視界の高さ。
「………………」
「………柴崎」
「………はぁ…、…気、抜いてたのかな…」
「いや…、お前は、集中力が周りより秀でているだけで…」
「……そのせいでこれだよ?…もうやってらんないよ…」
伸びた髪に女性特有の丸みを帯びた体。美形が美人へと変化した。ため息つくその表情は、どこか憂いを帯びている。
「柴崎先生」
「……」
顔を上げれば黄色の物体が膝…になる部分を床につけて触手を伸ばして片手を握ってきた。
「私とハネムーンしませ…《《ゴツンッッ!》》…にゅやぁ!?」
カチンと来た烏間、柴崎はそのふざけた頭を殴った。
「いつお前と結婚した!」
「アホ抜かすな!反省しろ!」
「お二人の拳は本当に痛い!!」
「「「「……;;」」」」
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