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しかし現実の現状は変わらない。またしても女になってしまった。日頃の行いが悪いのだろうか。


「…どうしよう、烏間」

「……。…とりあえず立つか。服は…またイリーナに任せよう」

「あぁ、服か…。…はぁ」



立ち上がるといつもと違う背丈。互いにとても違和感を感じる。烏間は烏間で少し視線を下に下げなければ見えない。柴崎は柴崎で少し視線を上に上げなければ見えない。この現状にやはりため息をつかずにはいられなかった。



「「はぁ」」












「やっぱりシバサキは清楚系ね!似合ってるわよ!」

「……ねぇ、なんでまたスカート?」



イリーナに事の状況と成り行きを説明すると、彼女は嬉々としてまたも服を用意してくれた。してくれたは良いが、またスカート。丈が長めなのはせめてもの気持ちだ。



「だってズボンなんて男なら毎日じゃない。でもスカートは女しか履けないのよ?なら今のうちに履かないと!」


さぁ!行きましょっ、と柴崎の手を引くイリーナ。男の柴崎になら出来ないだろうが今は同性。普段出来ないことも出来てしまうのだ。





「さぁ!見なさい!シバサキを!」


ガラリッとイリーナは教室のドアを開ける。生徒の視線も、他の教師の視線もドアへ。



「…って、もー!シバサキ!こっち来なさいよ!」

「なんで自分から醜態晒さなきゃなんないんだよ!女になっただけでもキテるのに!」

「綺麗なんだから問題ないわよ!ほら!来なさいってば!」


腕を引っ張られて教室へと入れられる。



「「「「おぉ…!」」」」

「柴崎先生お綺麗ですよー!」

「…全然嬉しくない」


季節は秋の終盤ということもあり長袖。下は長めのスカート。またもセミロングの髪。元来整っているので、女性になればそこに女性特有の美しさがプラスされた。



「柴崎、寒くないか?」

「んー…少しだけ。手が冷えた」


女性というのは多少寒くても我慢してお洒落をする人もいる。今の柴崎の格好はどちらかといえばそちらよりで、下はいけても上は少し薄着だ。



「…確かに少し冷たいな」

「いつもはそんなことないんだけどな。格好のせいかもね」




ナチュラルに会話し、ナチュラルに手を取り、ナチュラルに笑いかける。ナチュラル過ぎて何だとなる。


「1度あったから烏間先生は慣れたわね」

「柴崎先生も初めは沈んでたけど受け入れたな」

「騒いだところで…だもんね」

「…しかし」

「…目の保養だね」

「理想のカップル像に見える」






「羽織っとけ」

「えっ、良いよ。烏間それじゃ寒いし」

「良い。別に寒くない」

「でも…」

「柴崎の体が冷える方が問題だ。せめて羽織っておけ」

「…ごめんね。ありがとう」

「ましか?」

「うん」



少し腕を摩った柴崎の肩に自分の上着をかける烏間。渋るがそう言われて謝り礼を言って羽織った。先程より温かい。尋ねてくる烏間に柴崎は大丈夫だと返した。

その光景が…なんかもう、殺せんせーありがとう。となった生徒達であった。




「で、これは効き目の時間的にはどれくらいなのよ」

「4時間です。比較的一過性のものでそう長くはありません」

「あら、前は1日だったのにね」

「もういいよ、1日なんて。4時間でもマシな方」

「だってこんな美人なかなか居ないわよ?勿体無いじゃない!」

「イリーナ。俺男だよ?今は女だけどさ」

「構うことないわよっ」


楽しそうなイリーナに、柴崎はもう…と息を吐くのだった。




「……でだ。岡島、お前どうした」

「……」

「こいつがこんな静かだと逆に怖いな…」


柴崎が部屋に入ってきてからずっと無言な岡島。それに周りは心配やら怖いやら。



「せ、先生が…」

「先生?…ああ、柴崎先生か?」

「あ、あまりにも…っ、美し過ぎて…」

「お前のキャパが超えそうなのね。なるほどよく分かった」


烏間の隣に立っていた柴崎は何やらこちらを見てはまた視線をそらす、を何度か繰り返す岡島に首を傾げる。烏間に一声かけてそちらへ。



「岡島くん」

「っ!はい!!」

「どうかした?」

「なななな何がですか!?」

「チラチラ見るから、何かなって。大丈夫?」



心配そうに、少しだけ首を傾けて聞いてくる柴崎に、岡島は…。



バターン



倒れた。



「岡島ーーーっ!」

「しっかりしろーー!!」

「柴崎先生の色気に当てられたんだな…」

「……;;」






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