僕らは共犯者
「……こんちわ」
「……どもっす」
なんとも言えない、渋い顔をする2人。その2人を目の前に、この2人も疑問タラタラな顔をする。
「……なんで居るの」
「……お前ら暇か?」
「な訳ねぇだろうが!」
「これでもちょーちょーちょーっ!多忙だわ!」
ムキーッと地団駄を踏む赤井と花岡。なら何でこんなところに居るんだと烏間と柴崎は首を傾げる。別にくる用事など何も…
「これに呼ばれたんだよ!」
「つか連れて来られた!」
「ヌルフフフ」
「「(こいつか)」」
2人が指指す先にいるのは笑う殺せんせー。しかし赤井と花岡も殺せんせーに呼ばれて連れて来られたが、烏間と柴崎もまた殺せんせーに呼ばれて連れて来られたのだ。ここ、E組に。
今、教卓の前に立つ殺せんせーを挟むようにして窓側と廊下側に分かれて立っている。生徒達も殺せんせーの考えている事が分からず疑問符を浮かべる。
「何の用だ」
「こっちは仕事中だったんだけど」
「俺もだわ」
「いや俺もだって!」
「いやいや、あのですね?私昨日の晩から今朝までずーーーっと考えていた事があったんですよ」
「「「「(…殺せんせー、…暇、なのか?)」」」」
晩から朝までって…、え、寝てないの?と生徒達はマジか、みたいな顔をして殺せんせーを見る。だがそれを思っているのは生徒達だけではない。
「え、烏間、晩から朝までってどんくらい?なぁどんくらい?」
「日が暮れてから昇るまでだ」
「…柴崎、これ暇?暇なん?」
「万年暇」
両サイド、距離はあれども視線を感じる殺せんせー。少したじろぐ。
「にゅっ、にゅや…っ、ひ、暇ではありませんよ!?晩から朝まで考える事に昨日は私何時間も頭をフル回転させまして……!!」
「要は暇だ」
「暇だよ」
「暇なんだな」
「暇かぁ…」
「ヌルフフフ流石防衛学校からの仲なだけあって意見が揃いますね私感動ですでもその目やめて下さい!!」
にゅやぁ!!と触手で顔を隠すが、両サイドからの冷たさと呆れと確信と羨望の目がグサグサ刺さっている。
「あ、その…どうして赤井さんと花岡さんを呼んだんですか?」
磯貝が代表して聞けば、待っていましたと先程の居た堪れない様子から一変する。
「赤井さんと花岡さんと言えば、烏間先生と柴崎先生の同期であり、元同じ第一空挺団に入っていた方々です。となれば実力はそれ相当のもの。周りより抜きん出ていたでしょう烏間先生と柴崎先生。底知れぬ実力を持つこの二人と、今でも交流のあるこのお二人。……どれほどの実力がある方々なのか、興味が湧きませんか?」
「「「「……っ」」」」
生徒達はその言葉にピクリと反応した。確かに言われてみればそうである。烏間、柴崎は今でもその強さや実力、博識さは底知れない。学生時代から遡り、そして今でも総合的な分野で非常に優秀な成績と実績を収めている2人。だからこそ、上層部はこの2人を今回の特別任務に抜擢した。
そんな烏間と柴崎と気兼ねなく話し、気の置けない仲な赤井と花岡。彼等もまた過去第一空挺団所属であった。普段おちゃらけている風ではあるが、この2人の実力は確かなもの。烏間、柴崎のコンビネーションについていける者と言えば、この2人しか居ないであろうと今でも言われる程だ。
「別に今でも交流があろうがなかろうが、そいつらの実力は本物だ」
「そもそも、実力があるないで付き合ってるわけじゃないよ」
扉の側面に背中を預け腕を組む烏間と、壁に片腕を凭れさせて腕を組む柴崎。至極当然だという風な様子である。
「〜っ烏間!!柴崎!!」
「永遠の友よ!!」
「っくっつくな!」
「っ、苦しいって」
烏間に飛び付き引っ付く花岡と柴崎に抱き着き離さない赤井。それをやっぱり仲良いなぁと生徒達は観察している。
「烏間!好き!大好き!」
「大声で言うなっ。後近い!」
「俺の想いを受け取って!」
「要るかっ」
「酷い!でも好きだ!」
「柴崎、愛してる。この想いは墓場まで持ってくぜ」
「重いからやめて。捨てて」
「誓いの口付けでもしとくか?ん?」
「馬鹿は口と頭と行動だけにしてくれる?」
「ほぼ全部じゃん!!」
「…あれ?仲、良い?」
「……良い、はずだけど、」
「結構、…容赦ないね」
「…案外あれが愛の鞭だったり…」
「あ、…なるほど…」
あれが通常運転。巻き込み巻き込まれる関係であり、またあしらいあしらわれる関係でもある。どんなにあしらわれてもスルーされてもめげないのが赤井と花岡である。強い。