僕らは共犯者 3
「あの2人めっちゃ無視してる…」
「花岡さんの声にすら反応してないよ…」
「素晴らしいほどのアウトオブ眼中」
「…じゃ、これ」
「あぁ」
柴崎は烏間に拳銃を、烏間は柴崎にナイフを渡す。それに生徒達は突飛だと思う。いつもなら逆なのに、と。そしてそれは相手側の2人も思ったことであった。
「…柴崎がナイフ?」
「…烏間が拳銃?」
「「…逆じゃね!?」」
なんでなんで!と疑問中の疑問を抱く2人。周りからの疑問を向けられる2人はといえば…
「さっきしてたあれさ、明日までじゃなかった?」
「…そうだな。明日だ。あっちもだろ」
「あぁ…あっちもか。もう一個のあれはもう少し先?」
「…3日くらいは先じゃなかったか?」
「じゃあまだ余裕あるね」
普段通りの変わらない会話をしていた。最早模擬戦とは関係がない話だ。
「…今模擬戦始まる前だよな?」
「の、はずだけど…」
「なのに烏間先生も柴崎先生も普段通りの会話してるんだけど…!?」
「あれここどこ!?」
「お前らは余裕綽太郎共か!!」
「何普段通りの会話してくれちゃってんだよ!!」
「だって殺る準備出来てるのに始まんないからさ…」
「時間が勿体無いから仕事の確認をしていただけだ」
「なんかムカつく!!」
「審判!!もう始めちゃって!!」
「にゅや、もう良いですか?」
殺せんせーは両者組を見る。すると意識は切り替わった。互いに相手を見据えており、先程までの空気感はなくなった。平静とする一帯。
「………では、模擬暗殺戦。…開始!!」
合図と共に先に動いたのはどちらか。そして誰か。
「…っえ、」
「…め、ずらしく、ない…?」
「あぁ…。…まさか、」
「…っおいおい、マジか?えらく攻撃的じゃねぇの。どしたよっ?」
「…意外性がある方が、面白いと思わない?」
先に仕掛けたのは柴崎。ナイフで赤井に切り掛かる。だが赤井もそう易易とは殺られない。降りかかったその刃を手に持つ拳銃で受け止めた。
「っ細身のくせして、ほんっと力あんな…っ!」
「見た目だけじゃ人は分からないよ」
ナイフを持つ手首辺りに片手を添え更に力を入れ押す。すると、負けじと赤井もグッと押し返しす。
「力勝負じゃ俺だって負けねぇよ?」
「力勝負ねぇ」
「ん?…っぅえ!?」
ナイフを下に滑らせ離すのと同時に最小限の動きで体を横へと翻す。すると途端に支えを失った赤井は前のめりになりかける。が、なんとか持ち堪え踏ん張れば振り返りざまにナイフを受け止める。
「おまっ、あの場で体引くか!?」
「引いちゃいけないなんて言われてないからな」
力が加えられるナイフを受け止めながら、相変わらず常に頭を動かす底の見えない男だと僅かに口元を引きつらせた。
「…えぇー…柴崎が先に仕掛けたよ。意外だなぁ」
花岡は少し離れた先にいる柴崎と赤井を見るとそう呟く。そして自分は、と現状に向き直る。
「……で、俺の相手は烏間かよ」
「嫌なら柴崎の方に行けば良い。一対一が絶対条件じゃない」
「今俺が行ったら赤井の邪魔になって油断と隙が出んだろうが!したら柴崎の事だから目敏くそこを突いて来んだよ!」
「なら、お前の相手は俺だな」
「どっちも嫌だわー!けどやったる!」