学生には必ずやってくる。避けられない道であり、避ければ後々えらい事になる。
「…………」
「…………」
朝食時。朝からテンションガタ落ちな目の前の2人。それとは別に…
「朝からこんなには食べれないよなぁ…」
「少食だな、本当」
「血かな。遺伝的なものかもね」
「かもしれないな」
変わらない2人。いつも通り朝食を取っている。
「…お前らなんでそんな普通なんだよ」
「逆に聞くけどなんでそんなんなの」
「今日は天下分け目の戦いだぞ!?」
「後何回あると思ってる。最低後7回だ」
「今日入れれば8回だけどね」
「「余裕のよっちゃんか!!お前らは!!」」
信じられないわ!!と言う風に、大変大袈裟な反応をする2人。食べ終えた2人は水を飲んだり、前の2人に頬杖突いて見たりする。
「山張ったのに何がそんなに不安?」
「その山が不安!!」
「あの山でいいのか!?」
「どの山でも不安な2人に敢えて取れそうな山を教えてやったんだけど」
「柴崎がわざわざ山張ってくれたんだ。そこくらいは取れ」
「その余裕綽々感がもうなんとも言えねぇ!!」
「ムカつくわ!!」
「行くか、柴崎」
「そうだね」
「「待てい!!」」
席を立ち、さて向かうかとする2人に赤井、花岡は必死の形相で止める。朝からなんてもの見せるんだと2人は顔を歪める。
「…今日が俺達の命日かもしれないんだぞ」
「もう明日俺らに会えないかもしれないんだぞ?」
「静かになるな」
「骨は拾うけど」
「なんて薄情な奴ら!!」
「鬼!!」
「山張ってもらった人がよく言うよ…」
「その発言が鬼だな」
烏間〜、柴崎〜、と引っ付いてくるこの2人を引き摺りながら2人は食堂を後にするのだった。
「柴崎くん。全く君はやってくれたよ」
「本当にね。開いた口がふさがらないよ」
「「お前の山スゲェ!!」」
談話室。一日中あった試験を終えた防衛生達はしたい事をしている。ソファに座る烏間、柴崎に駆け寄ってきたのは朝はあれだけあーだこーだ、鬼だ薄情だなんだとボロクソに言っていた奴らだ。
「首の皮一枚繋がったか」
「変なケアレスミスしてなければその皮も問題なく繋がってるよ」
「大丈夫っ。何度見直ししたと思うてか!」
「2回!2回した!!」
「「へぇ」」
2回か。3回くらいしたなら、それはそれは…!となるが2回か。普通だな。逆に2回で威張るなら今までは見直ししてなかったのか。と2人は思う。
「烏間が物理教えてくれたからさ、めっちゃ出来たぜっ」
「柴崎が古文読解のコツ教えてくれたから、んなに躓かねぇで最後の問題まで行けたんだよ!」
「「サンキューな!」」
ニカリと笑いそう言う2人に烏間と柴崎はポカンと見て、その後互いに笑いを零した。
「それは良かった」
「教えた甲斐がある」
そして帰ってきた答案用紙。それを見せに来る赤井と花岡。どれどれ…と。
「…見事に山張ったとこだけ取ったな」
「悲しいんだか嬉しいんだが微妙だ…」
「烏間総合何点?」
「672」
「…は…い…?」
「…柴崎は…?」
「烏間と同じ」
7教科の試験、主要5教科と防衛学に第二外国語だ。なので、700満点採点だ。
「烏間何間違えたの?」
「防衛学の歴史部分だな…」
「あー、ややこしかったもんね」
「柴崎はどこ間違えた」
「俺は専ら物理の計算。取っ掛かり見つけるまでが大変で、計算まで手が回らないんだよね」
「惜しいな」
目の前で普通に繰り広げられる会話。赤井と花岡には別次元のように感じられる。
「烏間、柴崎…」
「お前ら何モンだよ…」
「え?人間」
「何言ってるんだ?」
試験で疲れたのかもね。ああ、だな。と話す2人に、なんだこいつら!!と地団駄踏む2人が見受けられた。
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