10月。秋だ。外の木々は茜色や橙に色付き始めた。
「……?」
なんとなく、いつもと違うように見える。気のせいか、そう思った。
「……やっぱり、違う」
いつもと、少しだけ。
「…はぁ」
無意識に出たそれに自分自身で気付き、眉間に皺を寄せてしまう。
「(……知らない間に疲れが溜まっていたのか…)」
寝てはいるし、休日はそれなりに休んでいた。…それでも、日々過ごしていれば疲れなんてすぐに溜まる。それが体に蓄積すると、解消しなければ溜まる一方なのだ。
「(部屋だとあいつらが来そうだ…)」
となると、休める場所なんてのは他に見つからず最早諦めかけである。
「烏間」
「……柴崎、」
振り向けばいつもと変わらない柴崎の姿が。
「…どうした」
「……。…今時間ある?」
「…?…あぁ」
烏間がそう返事すれば、彼は一つ笑って烏間の手を取る。
「…どこ行くんだ?」
「お楽しみ」
「?」
前を歩くその背中を見て、分からず心の中には疑問符が。どこに行くのだろうか。
外に出て、穏やかな風が吹く。空は高く、青い。白い雲が所々にあってどこか秋空を思わせた。
歩いて行く先。そこはここに1年半以上いて初めて知る場所。
「………」
「…綺麗でしょ」
木々の間を抜けて、その先にこんなものがあったのか…小さな丘の様なもの。そこから見えたのは防衛学校の外、所謂民間の家や建物が立ち並ぶ景色。大きなビルが立ち並ぶわけでなく、…どこか都会よりも田舎を思わせる。そんな景色。
「ここなら人は来ない」
「……」
「…だから、ゆっくり体を休められるよ」
「…!……気付いていたのか?」
隣に立つ柴崎を見れば、彼は前の景色を見たまま優しく笑った。
「最初は半信半疑で、でもいつもとは違う感じはした」
「……」
そう話してから、顔を烏間に向ける。
「話しかけたらいつもより反応が遅かったし、それにちゃんと真正面から見たら分かったよ。…疲れてるんだなって」
だからここに連れて来た。そう話す柴崎にただ驚いた。朝から何人かと話はしたが、誰もそんな風には言わなかったし普通だった。
「ここは静かだし、人は来ない。それにそれ程寮から遠いわけでもないからゆっくりし過ぎて慌てて走る、なんて事もしなくて良いしね」
休むには最適場。周りは自然だらけで、確かにここならリラックスだって十分に出来るだろう。
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