flower viewing



「柴崎」

「はい」

「悪いんだけど、明日弁当作ってくれないか?」

「え?」


突然の事に水を飲んでいた赤井も、腕を回していた花岡も、作業帽を被ろうとしていた烏間も、そして柴崎も止まった。



「明日な、空挺団員で花見しようってなってさ。花見といえば弁当だろ?そしたら料理上手そうなのって柴崎だなって。だからお前に作っ…「「死にたいんですか!!?」」…………え?」


お弁当話を持ちかけて来た宮野の前に赤井と花岡が立ちはだかる。2人に宮野は目をパチパチさせる。そしてそんか2人の後ろに見える柴崎は、…何故か烏間に慰められていた。




「……知ってるけど、あぁ言われると…」

「…。…後で絞めておく」

「え、?…っや、そこまでしなくて良いよっ!昔から知ってた事だし…!」

「柴崎に料理頼むなんて明日空挺団の滅亡っすよ!!」

「腹下すだけで済んだら御の字っす!!」

「…………」

「(…やはり絞めよう)」



オブラートに言葉を包まない2人に、自覚はもちろんあるがそれでも少しばかり柴崎は沈む。そんな彼を見て烏間は良いと言われたが後で絞めると心に1人決めた。そしてそんな彼に更なる追い討ちを。




「え、柴崎の料理ってそんな不味いのか?」

「「不味いっす!!」」



俺初めて食べた時これは食べ物なのかと疑問に思ったくらいで!!

見た目は超上手そうなのに味は本当にダークマター級です!!




「………………」

「…赤井、花岡」

「なん?」

「んん?」


ゴツッ!


「「いっだ!!」」


烏間の重い重い拳が2人の頭に落ちた。蹲る2人。見下ろす烏間。何かを悟る宮野。音に気付いて振り向く柴崎。



「えっ、え?赤井、花岡、どうし…「柴崎」…ん?」



蹲る2人を見てどうしたのかと聞く前に烏間に呼ばれそちらを見る。



「味云々は気にするな」

「ぇ…」

「だからあの馬鹿2人の言葉は今すぐ忘れろ」

「…あ、はい」

「(…烏間を怒らせるのは、止めよう)」



特に柴崎関連で。宮野はそう心に誓った。



「……あ、と、…つまり、柴崎の料理は、…ちょっと新味なんだな!OK!分かった!ありがとうなっ」

「いえ…。何も出来なくてすみません」

「良いんだ。…その、人には不得意はあるし、料理の味がイマイチでも……えと、」


その時烏間が目に入り咄嗟にこの言葉が出た。



「烏間にこの先作ってもらえばずっと安泰だ!」

「「え…?/は…?」」

「え?……っ!」


しまった。そんな言葉が頭を過…るよりもこびり付く。この先作って貰えばずっと安泰って、それは同棲する者同士もしくは結婚した夫婦に対するニュアンスによく似ているではないか。なんという失態。自らこの恋愛模様に終止符をつけてしまうなんて。


あわわわわ…と内心震える宮野。思わず下に向けた視線を前に向ければ固まった。



「でもずっとは悪いよ…。烏間にも烏間の生活があるし…」

「だがそれで柴崎が倒れでもしろ。元も子もない」

「んー…。…どうしたら上手くなるかな」

「練習じゃないか?」

「やっぱりそうだよな…」

「(良かった。こいつら2人揃って鈍感で)」


心配なんて全くの杞憂。抱かなくても慌てなくても良かった。いつも通り、普段と変わらず話す2人を見て宮野は心底ホッとした。

結局弁当は他の人に頼んだ。













「やはり今が丁度見頃だなぁ」

「黒川さん、桜を見ながら酒煽るのはやめましょう。まだ昼中です」

「堅いこと言うな、川島」

「そーだそーだっ。堅いこと言うな川島ー!」

「お前は甘い物の摂り過ぎなんだよ。いっそ糖尿になれ」




「桜の下には人が眠ってるんだぜ、花岡」

「ぅえ!?マジで!?待てよ待てよ!早く言えよ!今まさに近いところ立ってたじゃん俺!」

「実際知らねぇよ?」

「馬鹿野郎!!」




「うぉーっ。桜!すごい綺麗だな!間宮!土井!」

「とかいって、桜の花弁で滑ってころぶ…「あだっ!」…なよって言う前に転ぶ辺りお前らしいよなぁ…」

「あわわわわっ、倉木大丈夫!?」

「へーきへーきー!」




「……この団って案外のんびりしてるね」

「……外見だけじゃ分からないってことだ」


好き勝手に彼方此方で話すは飲むは転けるは騒ぐはで、もうちょっと収拾がつかなくなってきた。


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