夏だ、梅雨だ、プールだと言っていたらやって来た。期末テスト。椚ヶ丘中学では成績が全て。一年の総仕上げ。殺せんせーはこう思っていた。決戦の場であると。
「…なので柴崎先生。今回もお力添えよろしくお願いします」
「ツッコンでいいのかどうなのか…」
「いいと思うぞ」
「いっそ鋭くツッコンでやりなさい」
「主旨言え」
「にゅや!?き、期末テストですよ!期末テスト!前回の中間テストのようには行きません!倍返しです!」
そして連れられたのは教室。みんな教科書を開き、互いに教え合っている。
「あ、柴崎先生!」
「今回もあれ作ってくれるの?」
「作って欲しい?あれいる?」
「「「「欲しー!!いるー!!」」」」
「はいはい。じゃああとで小テスト集めて持ってきてね」
「ところで柴崎先生」
「?」
にょきっと柴崎の後ろから出てきたのは殺せんせー。その顔にはメガネがされている。似合わん。
「文系、理系。どちらがお得意ですか?数学を教えられているので、やはり理系でしょうか?」
「いや、どっちかというと文系。理系は烏間の方が秀でてる」
「にゅや!そうでしたか!では数学と文系を中心にお願いできますか?」
「了解」
文系苦手の子おいで、と声をかけるとわらわらと寄ってくる。
「英語、国語、社会、数学…。…ほとんど俺のところに来るんだけど」
「柴崎先生の教え方は明確かつ丁寧ですからねぇ。伸び率がいいんですよ。それに知ってますよ。中学時代、全国模試2位の成績をお持ちのことを!!」
「「「「2位ィ!!?」」」」
「なんでそんな何年も昔のこと…」
「柴崎先生のことならなんでも…!」
「プライバシーの侵害だ」
クネクネするな、気持ち悪いと足蹴にすると殺せんせーはシクシクと泣いた。それを無視して柴崎は生徒たちに向き合い、集めてもらった小テストを見る。
「んー…、木村くんは英語の長文が少し苦手かな?」
「は、はい!」
「狭間さんは国語が得意で社会の地理が苦手か…」
「覚えること多くて嫌になる」
「吉田くんは国語の小説が苦手ね…」
「心情とか良く分かんねぇ…」
「矢田さんは数学の連立方程式の応用が苦手…」
「問題文見ただけで拒否反応起こしちゃう」
一枚一枚見ていきそれぞれの弱点を丸付けていく。一番丸が多かったのは岡島だ。
「…岡島くん、得意なものとかある?」
「もちろんです!」
「なに?」
「盗撮と言う名の撮影です!」
「…、そっか…」
「諦めないで!!柴崎先生!!」
「岡島!柴崎先生凹ませんなよ!!」
「てか何!?盗撮!?犯罪よ!」
「え、え?えー!急に集団リンチ!!」
「されて当然!!」
その後教室を出て、片手に小テストを持ち一度教員室に向かう。先ほど烏間からメールが来て本校舎の理事長室へ来て欲しいと来た。小テストを置き次第柴崎も本校舎へ向かう。
「ごめん、待った?」
「いや、大丈夫だ」
「生徒に絡まれてたんでしょ?」
「テストのことでね。さてと、…理事長ね…」
「前回のこともあるからな…」
3人は目を合わせると代表して烏間が扉を開けた。
「E組の成績を落とすなら何でもする。私のことをそう思っていませんか?」
「いいえ。…でも私の右隣にいる堅物が貴方を疑ってきかないんですもの」
「釘を刺しにご苦労ですが…ご安心を。私は何もしませんし、それに…、私の学校は生徒の自主性も育てています。成績を決めるのは学校ではなく、あくまで生徒ですから」
「なーんか含みのある言い方だったわね。生徒の自主性がどうとか」
「まぁな。…だが、前回のような不正ギリギリの小細工はなさそうだ。まぁ誰かさんは無意識にそれを阻止しようとしたがな」
「褒めてる?貶してる?」
「褒めてる」
「ようには聞こえたいけどねぇ」
「そうか?」
「うん。…まぁ何にせよ、先生側には今回心配はいらない。けど、生徒関係では何か一悶着起きる可能性もあるね」
「…まぁな」
「ま、今回は…成績が直に暗殺と関係するみたいだし、私も一肌脱いでやろうかしら。保健体育なら私に任せて。そこの会議室で勉強しない、シバサキ?」
「英語はどうした?」
「英語もするわよー!でも保健体育だってあるでしょ?」
「あるにはあるけど、あれは教科書通りするのが効率いいと思うけど」
「硬いこと言わずに!ね?」
「…帰ったら対策プリント作るかな。烏間まとめるの付き合ってくれる?」
「あぁ」
「ちょ、こら!無視するな!!」
「こんなもんかな…」
「出来たか?」
「まぁね」
あれからE組のある校舎へ帰り、ひたすら小テストを眺めてはパソコンを打ち続けていた。やっとのことで完成し、印刷し終わった。
「おや?柴崎先生それはまさか…」
「言われてた対策プリント」
「完成したんですね!いやァ、仕事がお早い。今図書館に磯貝くん、中村さん、神崎さん、茅野さん、渚くん、奥田さんが居ますよ」
「図書館に?」
「なんでも磯貝くんが前々から予約を取っていたようで。今から勉強会をするそうですよ。ヌルフフフフ、良いですねぇ、勉強会!燃えますねぇ!」
「柴崎、図書館に行くのか?」
「今勉強してるなら、早めに渡しておこうと思って」
「そうか」
「じゃあ、またね」
「あぁ」
prev | next
.