世の中、広いというか狭いというか。とにかく、変なものは存在し、案外それは効果覿面だったりする。
その日は雨で、体育もあったけど出来なくて、急遽教室内での授業になった。どこの机でしてもいいし、1人でしてもグループでしてもいい。大体がグループだけど。内容は暗殺計画。一人一人がどんな暗殺をするかを考え纏める。
「…良いと思うよ」
「本当ですか?」
「うん。あ、ここはこっちから攻めた方がいいかな」
「なるほど…」
「潮田くんらしい計画案だね」
ぽんぽんと頭を撫でられて、柴崎先生はそのまま呼ばれた他の生徒の元へ行った。僕は柴崎先生に頭を撫でてもらうのが好きだ。なんだろう…落ち着く。
「烏間ー、これどう思う?」
「ん?」
でも、あの2人が阿吽の呼吸で過ごしているのを見るのは、もっと落ち着く。喧嘩なんて見たことないけど正直想像もつかない。どちらかというとお母さん気質な柴崎先生とお父さん気質な烏間先生。もし、こんな夫婦がいたら円満なんだろうなぁ。
「渚くん、何見てんの?」
「え?あ、あの2人」
「ん?…あぁ、烏間先生と柴崎先生?」
「うん。なんか、もしあの2人のどちらかが女の人で、夫婦だったら絶対円満なんだろうなぁって思って」
「あ!それは私も思った!」
「俺も俺も!」
「茅野と杉野も?」
「女の人で行くと…やっぱ俺は柴崎先生が奥さんかな。お母さん気質じゃね?」
「じゃあ烏間先生が夫?」
「そうそう」
「どっちかというと、烏間先生はお父さん気質だもんな!」
カルマくんと茅野と杉野の会話を聞いてて、僕1人が思ってたわけじゃないんだ。ってちょっと思った。今だって見てたら烏間先生も柴崎先生には凄く雰囲気柔らかいし、柴崎先生も烏間先生には絶対の信頼置いてるし。
「(なんか、いいな)」
ほっとする。
ガラガラっ
「烏間先生ー!柴崎先生ー!」
扉の方を見ると殺せんせーがいた。
あれ、なんで?
「お前な…今は授業中だ!」
「はいはい。用がないなら出た出た」
「用はあります!めっちゃ!」
「「くだらないから帰れ」」
「にゅや!!」
「やっぱあの2人本当いいコンビネーション」
「息めっちゃ合ってるよね!」
「ハモれんの凄くね!?俺出来ねぇ!」
「あの2人だから出来るんじゃないかな?」
「「「なるほどね〜…」」」
もう一度あの3人に目をやれば2人に殺せんせーが何か渡してた。…いや、あれは渡しているというよりは、押し付けている。だってすごい嫌そうな顔してるから。他のみんなも暗殺計画よりあっちに気を取られて見てる。気になるよね。僕も気になるし。
「それ!飲んで下さいね!」
「…これ何?どこ産?」
「原料はなんだ」
「まぁまぁそんな細かいことは気にせずに!今こそぐびっと!あ、2人同時に飲んで下さいね」
「「〜っ」」
怪しい。怪し過ぎる!あの2人があんなに渋るのも仕方ない!…でも烏間先生も柴崎先生も知っている。断れば後が面倒くさくて仕方がないことを。
「…や、いらない。お前飲めば?」
「あぁ。別に今喉乾いてないしな」
「いやいやいや!私はお二人に!お二人に!飲んで貰おうと思いまして!」
なんで二回言ったの!?ほら、みんな同じこと考えてるよ、きっと!だって、みんな僕と同じ顔してる。カルマくんは笑ってるけど。
「だからいいって」
「ほら、返す」
「にゅ〜〜〜っ。っこうなったら実力行使です!」
そう言うと、殺せんせーは触手で2人の首筋を固定して無理やりその飲み物を飲ませた。…ってぇ!こんな解説してるけど2人すごい嫌がってる!止めてあげようよ殺せんせー!
「「んー!んー!…っん」」
2人の喉に完全に通った。あの、よく分からない飲み物が。クラスみんな顔を青くてる。あんな得体の知れないものを飲まされた2人の行く末が凄く心配だ…!!
「っ、勝手になにす…っ」
「っ、お前な!いいかげ…っ」
あれ…、2人の体が傾い…
「「「「っ、烏間先生!柴崎先生!」」」」
そのまま2人は床に倒れた。2人が倒れるなんてよっぽどなんだ!特に烏間先生なんて像が受けたら倒れるガスをかけられても直ぐには倒れなかったのに!
「先生!先生!しっかりしてください!」
「烏間先生!」
「柴崎先生!」
「殺せんせー!2人になにしたの!?」
「このまま目ェ開けなかったらどうするんだよ!」
「ヌルフフフフ。心配いりません。時期に目が覚めますよ!」
「「「「…へ?」」」」
どういう事なんだろう…。時期に目が覚めるって…。
「…っ」
「! 柴崎先生?」
片岡さんが少し反応を見せた柴崎先生に気づいて声をかける。そして目が覚めた。
「よかった!目が覚めたん…「授業妨害、及び不可解な飲料持ち込み…っ、お前は俺と柴崎に何をさせたいんだ!」……え?」
起き上がって第一声、殺せんせーに向かって言った言葉はそれだった。…って、え?今…柴崎先生なんて…?
「…った」
「あ!烏間先生!大丈夫ですか?」
次に目が覚めた烏間先生の近くにいた磯貝くんが聞く。
「頭、大丈夫ですか?もし痛かったらびょうい…「っこの、ふざけんな!アホだこ!俺と烏間に何飲ませた!」……へ?」
あ、ダメだ。僕もそうだけどみんな頭が付いて行っていない。今烏間先生はなんて言った?…というより、何処と無く口調が違うような…。
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