course 3

知らない間に出してしまっているそれに柴崎は悩む。烏間も知っているのだろうか。今度聞いてみようと思うのだった。



「柴崎先生」

「ん?」



生徒に囲まれていた柴崎を呼ぶ殺せんせー。


「私は優しくて強く、そしてたまに天然な部分のある柴崎先生が大好きですよ」

「「「「え!?」」」」

「………俺は、別に好きでもなんでもないけど」

「「「「(ですよねー!!)」」」」

「にゅや!?そそそそこは、「俺も生徒思いで面白い殺せんせーが大好きだよ」ってなるところじゃないんですか!?」

「テレビの見過ぎじゃない?そんな返答するわけないし。あとお前のことはそんな風には呼ばない」

「呼んでくださいよ!柴崎先生!」

「イヤ」

「もー!!ケチ!!烏間先生に言ってやりますよ!!」

「あいつは俺側だと思うけどな…」

「そうだった…!!!」


おろろろろ…と泣く殺せんせーを生徒達は笑い、柴崎は呆れ笑い、イリーナは「馬鹿ねぇ」と言っていた。そんな中でも、渚の表情は暗かった。












「…お前の事だから気付いてると思うけど、最近うろついている男が一人いる。どうするんだ?」


廊下を歩き、教員室に帰りながら話す。


「もちろん気付いていますよね。…そうですねぇ、もう少しだけ泳がせましょう」

「了解」

「あ、後ですね?」

「?」

「明日、もしくは明後日。学校に10時頃まで残っていていただけませんか?」

「は?10時?」

「はい。よろしくお願いします」







そして次の日。


「さて、渚くん。もうすぐ三者面談ですよ。準備は大丈夫ですか?」

「はい…」


教室に渚、殺せんせー含む生徒達がいた。もうすぐ渚の母親が来る。しかし、その事を知らぬ者が1人。そしてその人物が教室の扉を開けた。



「聞いてないけど!潮田くんの親御さんと三者面談するなんて!」

「あり?言ってませんでした?」

「これっぽっちもな…っ。第一、お前を各生徒の親御さんとは面識させられないから俺が三者面談担当したているんだろうが!」

「大丈ー夫ですよ!変装しますから!」

「だから…っ、お前の変装は変装できてないから変装って言えないんだよ…っ!」

「こ、殺せんせー、柴崎先生に話してなかったの?」

「絶対断られると思いまして。ギリギリまで黙っていれば仕方ないなぁとなるかなと」

「なるか!」


なんとも頭の痛い状況下。しかしどうにかしなければならない。




「まぁ安心して、大船に乗った気持ちで見ていてください、柴崎先生」

「その大船が揺れ過ぎてこっちは酔いそうだ…」

「酔い止め飲みます?」

「比喩表現だろ!…で、一応、一応聞いといてやる。どんな変装だ」

「「「「(二回言った…!!;;)」」」」

「おっ、興味あるんですね?待ってて下さい、今用意してきますから!」



そう言って出て行き、数分後。窓に映る巨体が見えた。



「ヌルフフフ。変装なんて簡単なんです。要は烏間先生に化ければ良いんです」

「いつものクオリティ低い変装じゃあ誤魔化せねーぞ」

「すれ違うくらいならまだしも…、面と向かってじっくり長く話すからね〜。やっぱり柴崎先生に任せた方が良いんじゃないの?」

「心配無用。今回は完璧です!!」



そして出てきたそれ。



「おう。ワイや、烏間や」

「「「「(再現度ひっく!!!)」」」」


烏間、の変装をしているんだろう。多分。しかし無理があり過ぎる。再現度も低すぎて、もうなんなんだという感じだ。




「いつも通りの似せる気ゼロのコスプレじゃねーか!!」

「烏間先生そんなダサいパンタロン履いてない〜!」

「い、いやでも、眉間のシワとかそっくりやろ」

「その前に口!!鼻!!耳も!!;;」

「烏間先生のガチムチ筋肉を再現したんや」

「無駄なとこばっか凝るな!!柴崎先生を見ろよ!!あんなに落ち込んでもう立ち直れねぇよ!!どう責任とんだよ!!」


生徒の指差す方向には、頭に手を当てて座り込む柴崎。見たくないんだろう。変装の化けは烏間。自分の意中の相手をこんな形として、しかも物凄く似てなく最低クオリティで見せられるとなると心的にすごく来る。



「……目眩がする…」

「柴崎先生しっかり!!」

「駄目だ!心的ストレスが大きい!!」

「後心的ダメージも大きい!!」

「殺せんせーどうすんの!?」

「柴崎先生ごめんなさいーーーッ!!」

「今近寄ったら駄目だって!!」

「より一層の負荷を心に与えるから!!」

「せめてその変装解いてから近付いて謝ってあげて!!」


もうぐちゃぐちゃである。その後なんとか立ち直った柴崎。そして殺せんせーは菅谷が眉毛、耳、鼻を整え、教員室の机の椅子に男子達の手によって机の下に押し込まれた事により、見れるには見れるようになったのだ。



「……本当に、本っ当に!バレないように!(じゃないと俺が烏間に何言われるか…。それにバレたりなんてしたら国家問題だ…っ)」

「大丈夫ですって!」

「後その格好でそれ以上俺に近付くな」

「冷たい!!」


不安と心配を隠しきれないまま、柴崎は部屋を出て生徒達が外に出て教員室の外を見守る輪に入る。



「柴崎先生大丈夫かな…?」

「…もうここまで来たら運かな…」

「あれ、なんか諦めかけてます?」

「諦めたくもなるよね。心労が半端なくあるから」

「「「「(苦労かけます…っ!!)」」」」



そして始まった三者面談。最初の内は良かったのだが、途中から酷い叫び声の様な怒声が聞こえてきたのであった。生徒達は思わず耳を抑えて肩を上げる。


「っ、あいつ何言ったんだ…っ」

「お…おっかねー…;; メッチャキレてるぞ、渚の母ちゃん」



そして暫くして渚の母親は帰っていった。




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