course 2

「…シバサキは…」

「?」

「前のと、今のと…どっちが良いの?」

「格好の話?」

「そう…」

「んー…、イリーナの仕事向けに考えると前のほうが良いだろうけど…。俺は今の方が好きだよ。自然で」

「!」



そう言って柴崎は立ち上がる。そんな彼にカルマがねーねー、と話しかける。



「柴崎先生はさ、どんな服が好きなの?」

「…シンプル?」

「あー、ポイね」

「着飾るのは好きじゃないから。じゃあ、用は済んだから帰るね」



柴崎が教室を出て少ししてから、渚がイリーナの服に付いていたシールを音もなく取って握ったのを彼は知らなかった。











「柴崎先生」

「…はいはい、ちょっと待ってよ」


柴崎は席を立つと一つのカップを手に取り、そこにコーヒーの粉を。砂糖は5杯。ミルクたっぷり。





「はい」

「ありがとうございます」



柴崎の淹れたコーヒーに口を付けて飲む殺せんせー。それを見て、自分もコーヒーを入れる。ブラックだ。





「…ふむ。甘いですね」

「お前が5杯入れろって前言わなかったっけ…っ?」

「いえいえ、コーヒーの甘さではなく、柴崎先生の優しさのことですよ」

「………」

「このコーヒーのように、甘い。そして優しい味です」


カップに入れられたコーヒーに揺れる顔。ゆらゆらと湯気を出し、宙に消えていく。






「…私のやり方は、間違っていたでしょうか」

「……潮田くんのことを言ってるのか?」

「はい」

「…俺がとやかく言わなくても、お前はもうちゃんと答えを出してるんじゃないの?日頃の指導で。後はその答えに潮田くんがどう動いて答えを見付けれるか」

「…彼は悩んでいます。これからの未来を。進むべき道を。自分の才能に彼は気付いたんです。しかしそこに含まれる「勇気」には「自棄」が含まれている。相手を仕留めることができれば、自分はどうなっても構わないと」



殺し屋にとって、相手を見る観察眼。そして多少の自棄というものは大切で重要な才能だ。様々な場面に殺し屋は直面するからこそ、必要な才能と言える。



「だから私は宿題を出したのです。その才能はどうして身に付けたのか。なんの為に得ようとしたのか。殺す為のものか、倒す為のものか、……守る為のものなのかをね」



殺せんせーがコーヒーをまた一口飲む。やはり甘い。そして優しい。じっと聞き、深くは言わない目の前の人間のように、甘く優しい味だ。嫌いではない。寧ろ好ましい。




「そこまでやったんなら俺に言うことないだろ。やることちゃんとしてるみたいだし。特段俺が意見を言うところはないよ」

「ヌルフフフフ。この気持ちを再確認したかったのですよ。貴方なら、じっと聞いて必要な事のみを話してくれると思っていましたから」

「信頼されてるねぇ、俺」

「おや、嫌ですか?私からの信頼は」

「…微妙だな。殺す対象に信頼を受けるのは」

「ヌルフフ。確かにそうですねぇ。柴崎先生から見れば、私は暗殺対象ですから」

「まぁでも…」

「にゅ?」



柴崎はカップに口を付け、その口元をカップで隠した。




「……お前ほど先生らしい先生は、今のところどこにも居ないんじゃない?」



そう言って彼はコーヒーを口に含む。苦味が広がる。コーヒー独特のものだ。






「…やはり柴崎先生は」

「?」

「ツンデレですね」

「っゴホッ」



飲んでいる途中に言われ思わず噎せる。器官に入ってしまった。



「ゴホっゴホっ…ッ」

「おや、大丈夫ですか?背中摩ります?」

「っ、お前が変な事言うから噎せたんだろうが!」

「えー?だって柴崎先生すっごいツンデレじゃないですか。この間もそうですし、今回も。もー!そんなにデレられると先生照れちゃいます!」

「気持ち悪いから揺れるな…!」


隣で触手をゆらゆらと揺らしてニヤァとニヤける殺せんせー。それを横目に柴崎は片手にバインダーを持ち、挟んでいる書類を見る。




「そんな柴崎先生にお願いを。コーヒーもう一杯頂けますか?お砂糖5杯のミルクたっぷりで」

「自分で淹れろ」

「そんな!柴崎先生のコーヒーが美味しいんですよ!」

「誰が淹れても同じ味だ!」

「今週は烏間先生居ないから柴崎先生に好きなだけ引っ付けるんです!甘えれるんです!マイナスイオン貰えるんです!」

「引っ付くな!甘えるな!あとマイナスイオンなんて出してない!」

「え、気付いてないんですか?」

「…出てないだろ?…そんなの」

「出てますけど。微笑まれた時とか特に」

「……………」

「生徒達の間では柴崎先生の優しく柔らかい笑みはマイナスイオンだと専ら噂ですよ」

「……………」

「……………」



2人の間に生まれる沈黙。中々長い。




「本ッ当にご存知なかったんですか!?私ビックリです!!」

「こっちがビックリだわ!そんな噂が流れてて!」

「なんなら今から生徒達に聞きに行きましょう!」

「は!?いいよ!」

「いいから!ほら!行きますよ!」

「ちょっ、引っ張るな…っ!」



そして引っ張られ連れて行かれたのはE組教室。




「皆さーん!」

「あ?なんだなんだー?」

「どうしたの殺せんせー?」

「質問です!正直に答え…《バコンッ》…痛い!」

「いいって言ってるだろ!聞け、話を!」

「あ、柴崎先生だ」


引っ張られて連れて来られた柴崎が話を聞かない殺せんせーの頭を持ってたバインダーで叩いた。


「聞きましょうよ!実際の声の方が信じるでしょう?」

「別にどっちでもいいし気にならないから良い」

「皆さん!柴崎先生って微笑まれた時にマイナスイオン出てますよね!」

「だから聞け!」

「「「「出てる!!」」」」

「え…」

「ほら!!ね!!」


声を揃えて言う生徒達とイリーナ。ポカンとする柴崎。得意げな反応をする殺せんせー。



「先生笑った時本当にマイナスイオン出てるよ!」

「俺らの中では怒涛の日々の中での一癒しって感じ」

「普通に笑う時もだけど、優しく笑う時は特になぁ」

「烏間先生と居るときも基本マイナスイオン出てるよね!」

「ほらぁ、クラス全員そう言ってるでしょう?」

「(…いつの間に出してるんだろ…)」



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