ちっそ・どういたい



7ばん、ちっその白石視点。


今、俺の目の前には、決して見たくない光景が在る。
目の前とは言っても、そこに居る二人の会話が全て聞こえる程の距離ではない。
寧ろ、殆ど聞こえへん。
というより、校内の人気が無い場所に、男女が一組。
この状況はどう見ても、告白としか思われへん。
取り敢えず、視界はバッチリな訳やけど、会話はイマイチ。
まぁ、そんな感じの位置。

俺が何しとるんかって?
勿論、



「みょうじさんッ!!つ、つつつつきッ、付き合って、下さ、いッ!!」



出た。
ベタにも程があるわ。

朝からなまえの溜め息が、いつもより多い気がして追って来れば、やっぱり告白やった。
普段からそういう連中は、排除しとったというのに。
俺となまえが付き合ってへん事とバレた途端にコレや。

それに、正直言って、アイツより俺の方が上や。
全てにおいて。
主に、顔とか顔とか顔とか(ry
まぁ、その他も確実に、俺の方が上やろうけど。
そんな男子生徒に向かって、なまえが何を言い出すのかと思えば、



「ごめんなさい」

「ーっ!で、でもっ、彼氏は、居らんのやろ!?」

「え?……、………。あ、だからと言って、……付き合う事は、………」

「……っ」



取り敢えず、なまえは相手の男を振ったみたいやけど、その後の会話が聞き取れん。
男の方は興奮しとるから、普通に聞こえてくるけど、なまえはいつものような、やる気の無さそうな声量で話すから、殆ど聞こえへん。
けどまぁ、雰囲気から分かる。

恐らくなまえは、早く帰りたいんや。
あの顔は、帰る事しか考えてへん顔や。
流石やなぁ。
この状況で、帰る事だけとか。
だったら、呼び出し無視したらええのに。
律儀やなぁ。
優しいなぁ。
流石は、俺が惚れた女やで!



「まぁ、そういう事なので、帰ります」

「ちょっ、待って……っ!!」



あ、やっぱり帰るんや。
そんなサバサバした所もええなぁ。
んもうっ!大好きやっ!!

そんな事を考えながら見ていると、帰ろうとするなまえの腕を、男が掴んだ。
そのまま力任せに引き寄せるものだから、なまえはされるがまま。
このままでは、なまえはあの男に向かって倒れ込む事になる。
そんな光景を見て、俺の体は勝手に動いとった。

有り得へん有り得へん有り得へん有り得へん有り得(ry
俺のなまえが、あんな不細工の腕の中に飛び込むなんて、有り得へんっ!!
反射的に動いた俺の体は、間一髪の所でなまえを受け止め、不細工の悲劇からは救出出来た。
突然の俺の登場に、思い切り動揺し始める不細工男。
どうやらコイツも、なまえの事に関して、どれだけ俺が厄介かは、知っとるみたいや。
一方のなまえは、いつも通り反応が薄い。
あ、でも、その顔、ええわぁ。
それにこの状況は……。
なまえが俺の腕の中に居るなんてっ!
幸せ過ぎて、死ねるかもしれへん。
けれど、さっきから気になる事が一つ。



「早よ、その手放しぃ」



なまえの腕は、未だに不細工に掴まれたままだった。
この手を放させて、なまえを無事に家まで送り届ける事こそが俺の使命やと、目の前の男を睨み付ける。


さて。
この男を追い返したその後、なまえには何を言われるんやろ。
後つけた事とか、怒られるんやろか。
せやったら、嫌やなぁ。



ピンチの時は、呼んで下さい。



「……白石」

「は、はいっ!?え、えーっと、……お、俺は、偶然通りかかっただけっや、でっ!?べ、別に尾行しとった訳や……」

「ありがとう」

「……えっ!?」

「えらいえらい」



褒められた……っ!!