ボン・クレーの献身によりインペルダウンを脱出した麦わらのルフィ一行は、世界政府専用航路“タライ海流”に乗って一路海軍本部へと船を走らせていた。
追い風ではないため少し時間はかかるかもしれないが、この海流に乗って真っ直ぐ進めば本部に到着出来るはずだ。

ジンベエが舵をとり、ルフィが前方の海を見つめる傍ら、甲板では脱獄した囚人達が思い思いに身体を休めていた。
興奮してテンション高く騒いでいる者もいれば、疲れきって寝ている者もいる。

そんな中、突然大きな水音と叫び声が響き渡った。

「おい!誰か落ちたぞ!」

囚人服を着た男が船の下を指して叫ぶ。
船縁に駆け寄った男達が下を覗き込むと、確かに波間に人影が見えた。

「クマだ!」

「違う、カマーランド組の奴だ!」

その言葉通り、クマの被りものをした男の頭部と、必死であがいているらしい腕が海面から突き出していた。
どうやら泳げないらしく、「助けてくれェ…!」と叫ぶ声が聞こえてくる。

「ロープはねェか!?浮き輪を投げてやれ!」

「早く助けてやらないとどんどん船から引き離されるぞ!!」

ドタバタと慌ただしく救出にかかろうとする男達の耳に、再び大きな水音が届いた。
誰かが飛び込んだのだ。

「見ろ!なまえちゃんだ!!」

カラーランド組の一人が船縁から身を乗りだして叫ぶ。
海に飛び込み、海水に全身を包まれたなまえは、自分の身体に起こった変化を感覚で確認すると同時に、“尾びれ”で力強く水を蹴って泳ぎ始めた。

あっという間に溺れている男のもとまで辿り着き、もがく彼の背後に回りこむ。
恐怖にかられた男にしがみついてこられないようにするためだ。

「じっとしてて。いま助けるから」

脇の下に腕を入れて身体を支えてやり、頭だけ水面から出して声をかけると、恐怖に引きつった男の顔に微かに安堵の色が浮かんだ。
そのまま船に向かってUターンしていく。

船に近づくと、船縁にいくつも顔が並んでいるのが見えた。

「なまえちゃんが戻って来たぞ!」

「ロープを投げろ!!引き上げるんだ!!」

浮き輪がついたロープがなまえのすぐ近くに投げ込まれる。
なまえが男を浮き輪に入れてやると、ロープが引かれ、男の身体がみるみる引き上げられていった。

「この野郎、心配させんじゃねェよ!」

「せっかくシャバに出れたってのに、こんな所で溺れ死んでどうすんだ!」

仲間に囲まれ、荒っぽい祝福を受けたクマ男は、涙でグチャグチャになった顔で彼らに笑い返していた。
続いてなまえが引き上げられる。


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