──ガシャン。

クロコダイルの両手首を戒めていた海楼石の手錠が外される。

肩の辺りまで長さがある黒髪はいつも通りのオールバック。
しっかり筋肉がついた逞しい身体つきも尊大な態度も相変わらず。
横縞柄の囚人服姿さえもセクシーだ。


「社長!!!!」

身を屈めて牢屋の出入口を潜り抜けて出てきたクロコダイルに、なまえは体当たりする勢いで抱きついていった。
ぼすんっ!と胸に飛び込んできたその身体を揺るぎもせずに受け止め、クロコダイルがやれやれと言いたげな顔つきで見下ろしてくる。

「せっかく自由になれたってのに、何をしてやがる。好きな所へ行けと言っただろうが」

「はい、だから自分の意思で“好きな所(ここ)”に来ました!」

嬉しそうに笑ってクロコダイルを見上げたなまえの瞳から、ぽろりと涙が零れ落ちる。
一度決壊してしまうと後から後から涙が溢れ出てきた。

「もう……置いていかないで下さい……何処にも行かないで……」

笑顔から一転して泣きじゃくり始めたなまえを、クロコダイルはますます呆れたような顔をして眺めた。

「てめェは底抜けのバカだな」

「う"ぅ〜〜……」

「オイオイ、鼻水がつくじゃねェか」

そうは言うものの、逞しい腕はあやすようになまえの背中に回されている。
大きな身体の温もりと力強さに安堵しながら、なまえはぎゅうぎゅうと自分より何倍も大きな男の身体を抱きしめた。


「なまえが探してた“大事な人”ってクロコダイルの事だったのか」

「ヴァターシも驚いたわ」

まだ不信そうにクロコダイルを見ながら言うルフィに、イワンコフも驚きを隠せない様子で同意する。
そうする内に、通路を挟んで反対側の檻から同じくイナズマによって解放されたジンベエ出てきた。

「さァて、こうなったら時間がナッサブル……!!力技でこの監獄を突破するわよォオ!!ヒーハー!!」

気を取り直し、テンション高く宣言するイワンコフをよそに、ジンベエはクロコダイルと向き合う位置に立って彼を睨みつけた。

「白ひげのオヤジさんには手出しさせんぞ、クロコダイル!!」

「じゃあ今の内に殺し合っとくか?」

右腕になまえの身体を抱きながら、左手のフックをギラリと輝かせてクロコダイルが不敵に笑う。

「守りてェもんがあるなら、精々しっかり守ってみせろ。……どんな手段を使ってもな」


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