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毎年開港記念日に行われる花火とレーザーショーは、港町の初夏を彩る恒例のイベントだ。
臨港パークという海沿いの公園が舞台となっており、花火はその沖合いで打ち上げられる。
また、公園内に特設されたステージでは、地元アーティストによるライブも行われていた。

「急にお呼び立てしてすみません。仕事帰りで疲れていませんか?」

「大丈夫です。むしろ花火が楽しみで、疲れも感じずに頑張っちゃいました」

思わず赤屍に返す声も弾んでしまう。
こういうイベント、特に夜に開催されるイベントは、日常の中の非日常といった感じがして大好きなのだ。
誘われて迷惑するどころか、赤屍からの誘いのメールを見た時からずっとワクワクしていた。
赤屍は嬉しそうな聖羅の様子を見て、「それなら良いのですが」と微笑んだ。

「では行きましょう」

「はい」

八月の花火大会ほど大規模なイベントではないとはいえ、やはり混雑具合はかなりのものである。
駅のあたりから既にもうすごい混みようだ。
きっと会場となる公園はもっと大勢の人で混雑しているだろう。

目の前に海をのぞむ公園内には、所々に木立があり、昼時には芝生の上でランチをとる人の姿もよく見られる。
その広大な芝生広場に一般観客席が設けられているはずなのだが──。

(ん……あれ?)

浴衣姿の若い女性のグループの横を通り過ぎた事で、聖羅はふと気が付いた。
微妙に赤屍が向かっている方角が違う気がする。

「赤屍さん、公園に行くんですよね?」

「いいえ。あそこは混んでいますから、別の場所から見ようと思いまして」

なるほど。だから待ち合わせ場所が会場に一番近い地下鉄の駅ではなかったのか。
ここからだとかなり歩くはずだから妙だと思っていたのだ。

「少し会場からは離れてしまいますが、ゆっくり見られる場所ですから安心して下さい。ディナーを食べながら花火というのも、たまには良いと思いませんか?」

「大賛成です!」

聖羅は赤屍の腕に抱きついた。
仕事を終えて直ぐに合流したから、赤屍は聖羅の夕食の事までちゃんと考えてくれていたらしい。
相変わらず怖いくらい細やかな気遣いの出来る男だ。



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