奪還屋GetBackers。 裏稼業の人間がひしめく裏新宿でも名の知れた"奪還屋"である。 その蛮と銀次は、いま、夜の港の倉庫街を疾走していた。 ドオォォォン! 地響きをたてて崩れゆくコンクリートの壁。 その下敷きになる瞬間、あわやというところで飛び退いた二人は、それぞれ驚愕の表情で瓦礫の山を見た。 「あ、の、バケモンがっ!倉庫ごと斬りやがった!!」 ──ゆらり。 土煙の向こう側に漆黒の人影が揺れる。 それは徐々にはっきりとした形をとり、やがて黒衣の男の像を結んだ。 「もう終わりですか?お二人とも。少々期待外れでしたね」 クス…と印象的な笑い声をもらした男は、獲物を追い詰める狩人の瞳で二人を見遣る。 「ケッ、そう余裕でいられるのも今のうちだぜ」 先に反応したのは蛮だった。 "依頼品"を相棒に追いつけるやいなや、赤屍に向かって突進していき、その左腕から繰り出された蛇咬(スネークバイト)が凄まじい勢いで地面を抉り取る。 「そうこなくては」 しかし、薄笑いを浮かべた赤屍は、コートの裾を優雅に翻して、なんなく攻撃を避けて見せた。 切れ長の瞳が、ついと逸れて、銀次と銀次が抱える"依頼品"へと流れる。 「銀次君」 「ヒッ!」 「"それ"を落としたりしたら…分かっていますね?」 ガクガクと頷く銀次の返事に満足した赤屍は、小さく笑むと、蛮に向かって赤い剣を繰り出した。 |