「うなされていますねぇ」 「うなされてるねぇ、思いっきり」 ポッドの中で目を閉じたまま、うんうん唸っている聖羅を、二人の人影が見守っていた。 片方はこのバーチャルシステムの創造主、もう片方は少年に呼び出されてやってきた運び屋だ。 切れ長の瞳を愛しげに細めて聖羅を見遣りながら、赤屍はクスリと笑う。 「MAKUBEX君も人が悪い。こんなゲームをやらせて、夜ごと悪夢を見るようになったらどうするのです?」 「そうかな。僕の造ったゲームなんて可愛いものだと思うけど。現実(リアル)のほうが余程タチが悪い悪夢みたいなものだからね。それに、もしかしたら、これで多少は耐性がつくかもしれないよ」 「誰に、と聞くのは野暮でしょうね。応援されているのか邪魔をされているのか微妙なところですが」 ポッドの中の聖羅の表情がいよいよ切羽詰まったものに変わった。 どうやらゲームも大詰めのようだ。 「勿論応援しているんだよ。聖羅は僕の大切な友人だからね。君くらい力のある騎士(ナイト)でなければ、安心して任せられないだろう?」 「騎士という柄ではありませんが…まあいいでしょう。感謝しますよ、MAKUBEX君」 くす、と笑みをこぼして、カバーの上を手袋に包まれた指がすっとなぞる。 早く戻ってきなさい ゲームなどよりも ずっと濃密な恐怖と快楽を与えてあげましょう そして、この腕に捕まえて二度と離さない 目覚めた聖羅は果たして、安堵するのか、怯えるのか。 赤屍は早くその顔が見たいと思った。 |