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クリスマス本番とあって、観光地のショッピングモールは沢山の人々で賑わっていた。

建物の中心を真っ直ぐ抜けられる吹き抜けの通路では、期間限定のクリスマスマーケットが開催されており、世界各国のクリスマスグッズが販売されている。

「風が来ると寒いねー」

「うんうん、特に生足部分が!」

赤い服のサンタガール姿の聖羅は、鳥肌が立った腕を手でさすった。
ここは半分屋内半分屋外という場所柄、時々外の寒風が吹き抜けていくのだ。
販売・接客業の特性として、世の他の人々がお休みだったりイベントだったりするときこそが稼ぎ時だということが言える。

クリスマスイブだった昨日は真夜中過ぎに帰宅、今朝も早朝から出勤して商品の補充などを行った。
それでも、行き交う人々から発せられる幸せオーラとも呼ぶべきものを感じることで、何だか自分まで幸せなような気がしてくるのだから、お気楽だとかお人好しだと言われてしまうのだろう。
まあ、要は周りの雰囲気に流されやすいタチなのだ。

「ん?」

スカートがくいっと引っ張られた感覚がして斜め下に目を向けると、小さな女の子が身体のすぐ横に立って聖羅のスカートを握っていた。
緩やかなウェーブを描く長い髪は金髪、目も青い。
西洋人形のような美少女だ。

「どうしたの? あ、もしかして、おうちの人とはぐれちゃったのかな?」

しゃがんで目線を合わせ、笑顔で優しく尋ねると、美少女はこくりと頷いた。
日本語が通じなかったらどうしようと不安だったのだが、どうやら大丈夫らしい。

「迷子?」

「そうみたい。ちょっとインフォメーションに連れていってくるね」

同僚にそう断って、聖羅は女の子と手を繋いだ。
迷子放送をしてくれる案内所に向かって歩き出す。

「うわ、手冷たくなっちゃってるねー」

小さな手は驚くほど冷たかった。
こんなに冷えきってしまうくらい長い時間さまよい歩いていたのかと思うと胸が痛んだ。

「大丈夫?寒くない?」

女の子はこくりと頷いた。
じいぃっと聖羅を見つめている。
何だかむず痒くなってくるような視線だった。
観察されている気がする。
ぶしつけなくらい強い視線は小さな子供だからだろうか。

「お嬢様! ああ良かった、探しましたよ」

突然人混みの中からロマンスグレイの老紳士が安堵の表情を浮かべて駆け寄ってきた。

「すみません、ご迷惑をおかけして。知り合いのお嬢さんなんですが、少し目を離した隙に何処かへ行ってしまわれて…助かりました」

人の良さそうな老紳士は、申し訳なさそうな顔で聖羅に向かって頭を下げた。
女の子の反応からして、本当に身内の人間のようだ。

「そうだったんですか。気をつけて下さいね。今は変な人もいますから」

「はい、本当に申し訳ありません」

ペコペコと頭を下げる老紳士の前で、少女は聖羅と繋いでいた手を離し、ポケットから何かを取り出して手を持ち上げた。

「これ、あげる」

小さな手の平の上には、可愛い包み紙で包装されたキャンディがころりと乗せられている。
聖羅は「有難う」と笑ってそれを受け取った。
きっとお礼のつもりなのだろう。

「メリークリスマス」

いや、クリスマスプレゼントだったようだ。
女の子が手を振る。
彼女と手を繋いで老紳士も聖羅に微笑んだ。

「メリークリスマス。良いクリスマスを」

二人に手を振って、聖羅は仕事場に戻っていった。



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