霊感連夜レンジャー
2013/02/24 19:21

 Dは夜な夜なでかける。向かう先は、霊的スポットと呼ばれる場所だ。しばしば霊被害に遭う人が出ると言われる場所に、Dは顔色一つ変えずのりこむ。そして、なにくわぬ顔で浄霊の術を施す。彼が去った後には、ほとんど霊被害が再発しないのだ。
 今日も学校に眠そうな顔で現れた彼に、Dの友人たるBが話しかけた。
「よお、眠そうだな。昨日もまた行ってきたのか?」
「……まあな。病院で死んだ怨霊の恨みで、訪れた奴はみんな気が狂って自殺するとかなんとかいう所」
 一つあくびをして、Dは頷く。凄まじい現場にいったわりにはなんとも鷹揚な態度だが、それにはある理由があった。
「で、どうだった? その怨霊って奴は」
 Bの質問に、Dは肩をすくめた。
「さあな。俺はみてない。いつも通り、なんかお祓いっぽいのやってきただけだ」
「それでよく本当に霊害なくせるよなぁ」
 呆れたように言うBだが、Dはこともなげに答える。
「つーかさ、俺本当は霊とか信じてねーんだ。たぶん、今の科学技術で解明できないだけで、ああいうのは実際は科学的ななにかしらの害なんだ。シックハウス症候群を知らない奴が新築の家で体調が悪い日続きだったら、この家は呪われてるんじゃーと勘違いする感じみたいなな」
「お祓いできる奴が言うことかよ……」
「怪我が治る詳しい仕組みを知らなくても、軟膏を塗っときゃ治るのはわかるだろ?」
 そんなもんだよ、と言って、Dはよっこらせ、と席を立った。
「ちょっとトイレ行ってくるー。先生きたらよろしく言っといてくれ、あでぃおーす」
 ひらひらと手を振りながら教室を去るDの背中を、Bは複雑な表情で見送る。
「……ほんとあいつ、なんで浄霊能力すげーのに零感なんだろうな……」
 ──実の所を言うと、BにはDに隠していることがある。
 言うほどでもないし、彼の調子だとたぶん信じてももらえないかなー、と思っているので、Dに言ったことはないのだが。
「まあ……あんだけ霊に憑かれてたら、逆に霊感あったら大惨事か……」
 Bには、ずっと見えていた。
 Dの周囲にべったりと憑いた、多種多様な霊たち──そしてその一群に、新たに血みどろの患者着の男が増えていることが。
 だが、その霊たちによる霊障というのも零感Dにはないようだし、霊たちもDにつきっきりで周囲に害を与えることはない。だからとりあえず、まあいっか、と放置しているのだが……いやはや、あそこまで零感だと恐れ入る。
「まあ……知らぬが仏っていうしな。しかし一応、今度観光装って寺に行く話でもしてみるか……」
 呑気な友人の前途に、称賛と呆れのため息をつくBであった。




 突発的短文。適当に考えた語呂の良さそうなお題から。なんだか前回に続いて霊話になっちゃってますが。名前をアルファベット一文字にしたのは、怪談で霊を破る話でお馴染み、寺生まれのTさんをもじってます。最初はそのままTでいこうかと思ったんですが、まあ実際のTさんは霊視えるよなーということで微妙に変えてDにしました。Bもそんな感じです。
 Bは霊視能力があっても祓う能力がないので、まあ視てるだけですね。うわーあいつまた増えてんだけどもしかして昨日も行ってきた? 行ってきたかー、やっぱなー。な役どころ。こいつもいい加減慣れてそうですね、Dが霊増やしてくるのに。



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