宮澪


「宮には両親っていないの?」
「親か?昔いたんだけどな。もう亡くなってしまった」
「そ、そうなんだ…」
「あの時は今より人間達が討伐しまくってたからね。私と玉藻、彪悟と…妖狐の里から離れて『稲荷神』として生きてた宇迦之御魂神くらいしか残らなかったな」
「…な、なんかごめん…」
「いいよ、別に。両親と過ごした時間より3人で暮らした時の方が長い。特に彪悟には世話になってるし」
「ひ、彪悟?って?」
「あ、妖狐の里の頭領というか…。まあ、幼い私や玉藻を育ててくれた奴でな」
「へ〜」
「私や玉藻が結婚する時、あいつに報告に行かなければ行けないんだがそれが面倒くさい」
「えっ…何で?」
「気難しいし、あいつは人間嫌いだから「はあ?人間の娘と結婚?我は認めぬぞ」とご立腹だろうし」
「そ、そうなんだ…」
「反対されようが私がこっちに住めばいいだけだものな、澪?」
「えー、でもちゃんと報告には行ったほうがいいよ?というか結婚してくれるの?」
「してやってもいい」
「わーい、よかったあ」
「何が?」
「私、婚期遅れてるって散々職場で言われてるもの」
「ほう」
「だから婚期過ぎちゃったら出家して仏様に仕えようかな〜って思ってたのよ」
「杞憂になったな。私が貰ってやるわ。」



宮澪


「やっぱりまだ、怖いか?」
「…み、宮は…平気」
「嘘つくな、手が震えてる。無理しないで良い。…私は暫くは不寝の番で御簾の向こうで寝るから」
「宮…」
「澪が私の事好きなのはわかってる。でも…澪が怖がってるのを無視できるほど私は自分勝手ではない」
「私、宮の事は嫌じゃないの…だって、あの時助けてくれたじゃない…!」
「…」
「…一緒にいたいの。宮がいないと落ち着かないわ…」
「…澪」
「…!いひゃい…頬引っ張らないで…」
「いつからそんな我が儘になったのだ?折角私がお前の事を大事にしたいと、思っているのに」
「宮の事好きだから」
「澪には叶わんな」



宮澪

「狐は女性に化けるのが得意と聞いたんだけど…」
「そうだな」
「宮はで、できるの…?見たことないからちょっと見たい…な…なんて」
「ヤダ」
「うっ、すぐに否定されるとは…」
「嫌だったら嫌だ。」
「な、なんでそんなに嫌なの?その姿(18歳女装姿)なのに…」
「…」
「…」
「…苦手なんだ、化けるの」
「えっ」
「私はどちらかというと戦闘、というか…狐火とかそういう類は得意なんだが化けるのだけは…これが精一杯なんだ!苦手すぎて性別も変えきれん!」
「…そ、そうなの…?」
「言うなよ」
「う、うん…」
「特に靖紀とか玖條には言うなよ。絶対バカにしてくるから」
「あ、兄上様はしないと思うけど…」
「『澪から聞いたんやけど、狐君にも出来ないことあるんやねえ』って言うに違いないから!もうこの話は御終い!」
「(あ、拗ねた…)」



宮澪

「あ、宮!」
「どうした」
「これね、作ったの。もしよかったら宮に…と思って…」
「つ、くった…?この帯をか…?」
「うん。私ね、刺繍は得意なんだ。無地だと味気なかったから匂宮に似合うようにと思って、藤の花とか桜とかを縫ったんだけど…嫌いだった?」
「いや、嫌いじゃない…(本当に元々縫ってあるように丁寧な…)」
「ど、どうしたの?言葉少ないような…」
「いや…。贈り物はたまにされた事はあるけど…手作り品を貰うのは生まれて初めてだ…」
「えっ!そ、そうなの!?」
「ああ。…だから、心から嬉しいのだ。有難う、澪」
「どういたしまして…。そ、そんなに気に入ったのなら他のも作るよ?気分転換にもなるし!(見たことないくらいの笑顔…本当に嬉しいのね…。)」



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