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以下、お礼文です。
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事務所のみんなでの飲み会があるとか、それで帰りが遅くなるとか、連絡の頻度が減るとか、そんなのは仕方のないことだ。そりゃもちろん一緒にいられる時間が長いほうがいいに決まってはいるが、私の「いやだ」という子どもみたいなわがままで勝己くんの生活を制限したくなんかない。
だから毎回「わかった、気を付けてね」と返事をしているのだが、そのあとに勝己くんが決まって物言いたげな顔をする理由はいまだにわからない。
お風呂から上がって髪を乾かしていると、玄関が開く音がした。
冬、外から帰ってきた勝己くんを見るのが好きだ。不満気にポケットに突っ込んだ手と、すこし竦めた肩と、わずかに赤く色付いた鼻の先がかわいいからだ。
「おかえり」
「ン」
お酒のせいか、その声は少し鼻にかかっている。
「寒かったでしょ。飲み過ぎてない?」
「……ねェよ。いいから早よ髪乾かせ」
せっかく出迎えに行ったのに勝己くんは私の背中をリビングまで押し戻した。
そして、マフラーとダウンを脱ぎながら言った。
「あー、再来週三日ぐらい家開けっから」
「あれ、そうなんだ。仕事?」
「仕事以外にねーだろ。九州。てめーも来い」
予想外の誘いに思わずドライヤーを止めて、「え?」と聞き返す。
「じゃねえと二人なんだよ。俺と事務所の女と」
嫌だろうが、と彼が付け足すので、そういうことかと合点した。
きっと私に気を遣って、私が嫌な気持ちにならないように言ってくれているのだろう。
けれど、仕事で行くというのに部外者の私が付いていくというのは変な話だし、何より、私は勝己くんが浮気をするような人だとは思っていない。
「気にしなくて大丈夫だよ。家で待ってる」
洗面所にいる勝己くんに向かってすこし声を張ってそう言ったら、くぐもった「あ!?」が聞こえてきた。
勝己くんはぶっきらぼうな足取りでこっちへやってくる。気に入らない、聞かずともわかる彼の感情が伝わってくる。
「なんで」
「いや、なんでって言われても――」
私が答える前に、勝己くんは私を腕に閉じ込めた。珍しいことに肩に顔を埋められると、まだ彼が首元に纏っていた冬のにおいが鼻先を掠める。
やっぱり飲み過ぎたのかな、と思って背中をさすろうとしたけれど、勝己くんの「なあ」というやけに切実な声がしたので、やめた。
「……たまにてめーの聞き分けが良すぎて嫌ンなる。なんでもかんでもヘラヘラして『大丈夫だ』とか『そうなんだ』とか」
「え?」
「……俺はてめーのモンじゃねえのかよ」
だからどうしろとは彼は言わなかったが、私をねだるように見上げた瞳が何よりも「寂しい」と語っていたから、私は思わず彼の後ろ髪をくしゃりと潰しながら、すこし笑ってしまった。
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