'cause i love you
10

家が見えた、その時だった。

「あ、あの!泉水さん!」

「う、えぇっ??」

電柱の影から突然人影が現れた。

驚き急ブレーキをかけると、バランスを崩しながら踏ん張りコンクリートに両足をつけた。

「び、っくりした…」

「あ、あの、ごめんなさい!」

電柱の影から出てきたのは、小柄な女の子だった。

うちの制服だな。
普通科か。

女の子はまだあどけなさが残っているので、きっと新一年生だろう。
華奢な体は少し震えていて、4月といえどまだまだ寒いこの夜空で女の子が1人で待っているなんて。

智希は自転車から降りて彼女の前に立つと、何度も経験した事のあるこの空気に溜め息をついた。

あー早く帰りたいのに。
今日はじいちゃんから届いたキャベツをどう料理するか楽しみにしてたんだよなー。

つか家調べられてる?

「なに?」

少しかがんで女の子の目を見ると、目が合った瞬間女の子は顔を真っ赤にして俯いた。

早く。早く。
下手したら父さんと鉢合わせじゃん。

「ごめんね、ちょっと早く家戻んないとダメだから、用事があるなら…」

「あ、あの、泉水先輩!昨年のインターハイの時からずっと好きでした!よ、よければ付き合ってください!」


付き合うわけないじゃん。


「初めまして、だよね?」

「あ、あの。お話するのは初めてです!私が一方的に先輩を見てましたが…」

うつむきながらもはきはきと喋るこの女の子のつむじをじっと見つめながら、智希はどうしたもんかと首を傾げ星の見えない空を見た。

こういう場合ひどく振ると後が怖いんだよなー。
家も知られてるっぽいし、あんま男慣れしてなさそうだからストーカーとかされると厄介だし。

「えっと。ありがとう。でもごめんね、俺今付き合ってる人いるから」

「そ、そうです…よね」

女の子はまだうつむいたままで、さらに声も大きく震えてきた。
泣いているのだろうか。

「あ、あの、友達、には、なっていただけませんか?」

「友達…」

智希は依然つむじに話しかけるが、再びどうしたもんかと空を見た。

やだなー。番号とか聞かれるのやだなー。

「ごめんね、俺の恋人さんさ、そういうの凄く敏感で。あんま女友達作れないんだ」

「ひ、ひどい人ですね」
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